26.もうすぐそこに着く。
「ヒカロアさんは……いえ、皆さんは、すごいですね。そんなふうに話し合えて、うらやましいです」
「ぼくは、ずっと
「わかるような気がします。彼女はとても個性的で、一緒にいると、
「
ミツヒデが、目を細めて笑った。
「おっと、
「黙っていなさい、
「良いんです、ヒカロアさん。ミツヒデの言う通り、ぼくが臆病だったんです」
「ぼくが、もっと早く気持ちを伝えられていたら……
「なるほど。この前から気にしていたのは、そういうことですか」
ヒカロアは
「あなたらしい思考ですね。嫌いではありませんが……それは、
「え……?」
「
ヒカロアは、はっきりと言葉にした。
「あなた自身も、かも知れない、としか言えませんでしたね。仮にあなたが、始めから
「それは……そう、ですけれど」
「あなたにあなたの限界があったように、
ヒカロアにもアシャスにも、後悔することはいくらでもある。ひょっとしたら、魔王ワスティスヴェントスにもあるのだろう。
それでも、世界の過去そのものである自分たちが、なんだかえらそうに見えるとしたら、それはアシャスが、勇者が望んで創造してくれたこの新世界があるからだ。
ここにいることが、それまでの過去を肯定してくれているからだ。
「過去を決めてきた
ヒカロアの言葉が、
誰しも、言葉にしていることが、言葉にできることが、そのすべてではない。言葉はいつだって、心を表現するのに充分ではない。
だからこそ、大切なのは、言葉を語り尽くしてその先に
ヒカロアは、自分に向けても言っていた。自分自身で、気がついていた。
女神は、アシャスとヒカロアを結びつけることに、何度も失敗したと言っていた。それで良いのだろう。現世では、現世で生きている人間の
今この瞬間が、気の遠くなるような偶然と、わずかな変化の積み重ねの上に、互いの心がやっと整い合った結果なら、ここから先を決めるのも自分たちの
ヒカロアは
「あなたと
「……ありがとう、ございます……ヒカロアさん……」
ミツヒデが一声鳴いて、満足そうに
あけた猫缶を片づけながら、
「それにしても、時間が
「ええ。あ、ちょっと待ってください」
「あれ? この番号は……? はい、
『
通話に出たのは
『この番号は
「今ですか?
『
質問ではない。確認だった。
『もうすぐそこに着く。落ち着いて聞いて欲しい、通報があった』
「通報、ですか?」
『
吸い込んだ息に、のどが震えた。
『ファミレスで会っていたらしい。
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