25.全力でかばうものですから!
明日の土曜は、二人で新居を見に行く予定だった。
それ以外にも、毎週のようにウェディングプランナーとの打合せや、ホテルとの詳細確認が入っている。自然と、金曜の夜に二人の意見をすり合わせて、土曜に用事を済ませ、日曜はできる限りそれぞれ自宅で休む、という長期対応シフトができていた。
アシャス一人が、金曜のお泊まりを納得していないようだったが、それはまあ、
「合鍵は持っているでしょう。先に行って、待っていれば良いですよ」
ヒカロアが、こともなげに言う。
「そうですね。なにか簡単に温められるものを、買っていきましょうか」
それほど遅い時間ではない。道すがらの商店街で、お
野菜は使い切りの分量でないと、
実家が資産家でも、
「あの女神が、そんな立派なことを考えますかね? 自分の設定を忘れていただけかも知れませんよ」
「ええ、まあ。母さんもあれで、とぼけたところがありましたし。
放任主義と過保護が、ざっくり混ざったような
「
「いえ。電子レンジも使えば、すぐですよ」
「では、最初に少し時間をください。ちょうど良い機会です。
「え……? ああ、そうですね」
ヒカロアの持って回った言いように、
********************
買ってきた荷物をダイニングキッチンに置いて、ヒカロアがミツヒデをにらんだ。リビングテーブルに
「
「それはもう、優しいアシャスが、全力でかばうものですから! 見逃してあげていたのですよ」
ヒカロアがカリフラワーと玉ねぎを、包丁で、これ見よがしに切り刻む。
八つ当たりするものがなくなって、ヒカロアが
「飼い主の
「猫一匹に、
ミツヒデが、にやりと笑う。
「もちろん新婚家庭にもついていくつもりだが、それでは先が思いやられるな。身が
「率直に問います。あなたの真意がわかりません」
「悲しいな。おまえが一番、
「あなたを殺した私が、ですか?」
「くだらないことを言う。おまえを殺したのも、勇者だろう」
ヒカロアが言葉につまる。我が意を得たりと、ミツヒデが鼻を鳴らした。
「
「アシャスに復讐している、と聞いていますが」
「前世では、途中からおまえに割り込まれたからな。せっかく生涯の宿敵と
ヒカロアの目尻が引きつるのを、ミツヒデが愉快そうに、流し目で見た。
「あれをからかうのは、とてもおもしろい。長生きしてやろうという気になる」
ミツヒデが、大きく身体を伸ばして、あくびをした。
「転生してスローライフを志向するのは、
あくびついでに、するりと床に降りて、ミツヒデがダイニングキッチンに入る。前足で、
「今日はササミ味の気分だ。食後のあばんチュールは、まあ、遠慮してやろう。太ると、長生きが難しくなるからな」
足元から堂々と見上げる黒猫の姿に、ヒカロアも、大きくため息をついた。
「なんとも、まあ……アシャスの愛され
「たかが猫だ。こう見えて、おまえにも気を
「だったら、そのまま放浪の旅にでも出てください。幸運を祈って差し上げますよ」
「悪くないな。あれが
「今すぐ死にますか」
「次は、なにに転生するかな。若夫婦の子供というのも一案だ」
「……寝室は立入禁止ですよ、
「キャットタワーと、Mamazonの
アシャス本人のいないところで、アシャスをめぐる紳士同盟が結ばれた。争いを回避したのだから、アシャスも本望だろう。
ヒカロアは、切り刻んだ野菜を
「面倒をかけましたね、
ヒカロアの声に、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます