15.話の落とし方っ!
結局、四人横並びのようになって、いろいろ重めの昼食を食べていると、呼び鈴が鳴って玄関の開く音がした。
慣れた調子で、すぐにリビングへ、三十歳ほどの
「や、遅れて申しわけない。
「
そう言って片手で差し出されたカードには、名前と携帯電話の番号が、子猫の頃のミツヒデの写真と一緒に印刷されていた。
ならんだ
誰も、気にしていないようだった。
「よろしくお願いします、
「もともと、後輩なんだって?
「やめてよ、お兄ちゃんまで! それもうやったから! 二回目!」
「おっと、外したか。悪い悪い。それじゃあ、おわびに、ほれ。ラ・トルレのフルーツタルトにございます」
改めて思い返せば、警察手帳を見せたのも名刺も、片手だ。本当にさりげなく身体を使う、武道や体術の動きだった。
アシャスと、多分ヒカロアも、内心でちょっと目を見張った。
「おお、それなら許すわ! 良きにはからえー!」
調子に乗った
「切り分けるくらい、おまえがやれ。母さん、俺、紅茶ね。アールグレイが良いな」
「黄色いリプタンしかありません。お皿も出すから、ほら
「えー、やるけどさ。こういう時に女ばっかり働くのって、もう古い……」
調子ついでに口を
「あら、まあ。お父さんは一家代表のホスト役、
「ふ、ふみません、おはあさま」
いつもは
「おまえも人の子なんだなあ。なんだかんだ言って、やっぱり嫁入り前の
「うっさい、ヘナチョコ。なに、その上から目線? ムカつくー!」(小声)
台所で、渡された包丁を空中に向かって振り回す
「食器の上げ下げくらい、ぼくも手伝います。結婚のための
「あら、まあ。こちらこそ嬉しいわ」
「やりますね、
「おまえと一緒にするなよ! それにしても、まあ……お母さんも顔、器用に使い分けるもんだなあ」(小声)
「あんた、雑なのは女性全般なのね。そりゃ姫さまと、くっつけなかったわけだわ」(小声)
「か、かか、関係ないだろ、今そんなことっ!」(小声)
「そうだよ、
「
腹話術でごちゃごちゃ言い合う
「それじゃあ、私は紅茶を
笑顔の圧が、さすがにアシャスにも伝わった。恐々と首をすくめて、四人の二人でリビングに戻る。
リビングでは、
「あれ……? いつもは単純な四つ切りだったけど、今日は五等分ってこと? 難しいわね……」
「おまえ、本当に普段、料理してないんだな。こういう時は八等分で良いんだよ」
「小さすぎるわよ! それなら、あたし二つ食べて良い? 良いよねっ?」
「
「手伝いましょう」
「うわわっ? こ、こら……!」
思わず、アシャスが奇声を上げる。ヒカロアが耳に、
「し。さわぐと、変に思われますよ」(小声)
「おまえ、急に……余計なことするなって言っただろ! 近い! 顔が近いって!」(小声)
「なんの問題もありません。婚約者同士です」(小声)
「ヒカっち、サプライズにグッジョブよ! ヘナチョコ受けもバッチリ! 二人の共同作業的、さりげなく肩を抱いた手もイエスねッ!」(大きな小声)
「
ものの数秒で、目標が形を変えないまま、きれいな五等分になった。今度は
「……へえ? すごいな、
「恐れ入ります。五角形は魔法陣……いえ、漢字の火の字なんかをイメージすると、うまくいくんですよ」
「それにしても、フルーツを一つも崩さず切ってるな」
「あ、それは俺……いや、ちゃんと、刃物は使い慣れてるから。安心して下さいよ、お兄さ……お兄ちゃん!」
「……」
アシャスとヒカロアの、あまり上等ではないフォローに、だが
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