14.お邪魔したことあるんです。
よく晴れた週末の朝、
「
「なるほど。その時の記憶は……ああ、確かに。残念ながら、まだ恋人同士ではなかったのですね」
「部活動のみんなと一緒に、
のんきな
「おい、
「うっさい、ヘナチョコ」
なんとかまっすぐ歩きながら、アシャスが
「自分の家族だろう。
「わかるけどさー、うー」
「そりゃ、電話で知らせた時も、喜んでくれたわよ。でも、ほら、大学の時に出戻って、就職したらまた出て、それっきりでさ……あんただって、あたしの記憶で、ウチの家族のことわかるでしょうに」
「明るい、良い家族じゃないか。なにが不安なんだよ?」
「いや……なんて言うか、反応の程度が怖いな、って……」
「大丈夫だよ、
「うん、まあ、シンイチローがどうこうって心配は、してないけどさ」
「私たちも、しっかりサポートをしましょうね、アシャス」
「俺たちが出しゃばったら最悪だぞ! 余計なことするなよ、絶対!」
二人の腹話術じみた会話に、時々すれ違う人が、首を
そうこうしているうちに、
住宅街の
「本日はっ!」
「お日柄も良くっ!」
「
「母の、
ちょっと白髪の混じった、五十代も後半の二人が、きっちり最後に声を合わせる。
「冗談抜きでふつつか者ですが! どうか末長く!」
「ちょ、ちょっとやめてよ、お父さん、お母さん! まだ靴も脱いでないのに、段取りもなにも滅茶苦茶でしょ! それから、その
両親とも、そんなまともな指摘にひるむテンションではない。
「
「ぼくもだ……!
「お父さんっ! あの時は! 部活の! 集まり! 他のみんなもいたでしょ!」
「本当にもう、この
「お母さんっ! 多分、あんた! 人のこと言う前に、昭和アイドルの写真、ちゃんと見えないところに隠したんでしょうねっ?」
「母さんから、あの時の君の隠し撮り写真を見せてもらって、こんな子が
「そんなもの撮ってたのっ? 失礼だから全部処分してよ! とにかく家に上がらせろ!」
「ありがとうございます……ぼくもまだまだ未熟者ですが、これから二人、助け合って幸せな家庭を築きます。
「シンイチローも! こんなスピード感に合わせなくて良いから!」
「……
「……ええ。あなたと同じ
フォローも、余計なことも、あったものではない。騒ぎは、まだしばらく続きそうだった。
********************
リビングのテーブルには、いくらと
ならべすぎて、取り皿を置くスペースもない。いくつかの大皿は、お盆を脇に置いてどかした。全員おそろいの座布団は、多分、新品だ。
「どう、
「ありがとうございます。すごく
最初にビールで乾杯をして、後はもう、下にも置かない
「まったくもう、出だしっから恥ずかしい暴走して……大体、こんな派手目な料理、お母さんだって普段は全然……ふもがっ!」
「はははは! 気に入ってくれたら、
結構な大きさのテーブルで、
「お、お父さん、そういう言い方は差別的! 今時、料理が女の仕事って、決まってるわけじゃ……」
「あら、まあ。そんな生意気は、他のことでオトコ心をしっかり捕まえられるようになってから言いなさい。料理が一番、汎用性があって、練習コスパが良いのよ?」
「ふ、ふみません、おはあさま」
今度は
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