2.言ってみるものですね。
「そ、そんなにくっつかなくても、大丈夫だよ! パスーモの使い方も路線図も、なんでだか知らないけど、ちゃんとわかってるよ!」
「意識の問題でしょうか、女性としては
「大きなお世話だよ! 子供じゃないんだから……近い! 顔が近いって!」
「なんの問題もありません。恋人同士です」
「ちが……っ!」
「違うのですか?」
「ちが……わない、けど……っ!」
だが、これも意識の問題なのか、少し
「どうして、こんなことになっちゃったかな……。お、おまえが悪いんだぞ! 最後の最後で、なに言ってくれてんだよ! 男だぞ、俺は! 少なくとも、あの時までは!」
「ですから、
「だ、だだ、駄目に決まってるだろっ!」
日常生活ばかりではない。昨夜のキスも、ベッドの中で感じた熱さも、
だから、お互いの呼び方は、
お互い、少しがんばった格好だ。
流れる景色は良く晴れて、ビルも、
「……平和、なんだな」
「どうでしょう。確かにこの国を含めて、秩序と豊かさが両立している範囲が、存在はしています」
「ですが……無秩序や争いが、なくなっているわけではありません。今この瞬間に、世界のどこかで、泣いている人も、殺されている人もいるでしょう」
「そんな大きさで定義しても仕方ないだろう。説教くさいところは、変わってないな」
「平和を感じられる空間が、平和を望んで努力する人たちが……少しでも広がって、変わり続けている世界なら、それだけで俺は嬉しいんだよ」
「すいません。我慢できなくなりました」
「なっ、な、なにをだっ? おい、こら……っ!」
もがいて、声を上げようとして、くすくすと笑っている
窓に写った、おもしろい表情の自分は、しっかりと
********************
先に食事をしてから、二人で、昼下がりの街を少し歩いた。
目的地の点を結んだ、効率最優先の線上を移動する、どこの世界でも男の行動は、おおむねそういうものだった。
「そう言えば、姫さまの脱走につき合わされた時も、こんな感じだったよな。いちいち
「後ろで見ていて、胃が痛くなりましたよ。姫の機嫌がどんどん悪くなるのに、まったく気がつかなかったでしょう?」
「田舎育ちで、食料の買い出しくらいしかしてなかったんだから、しょうがないじゃないか。早く満足してもらって、城に返すことばかり考えてたよ」
「あなたの望むところにお供します、とまで言われて、
「いや、その……そういう経験だって、なかったし……」
「ですから、
「おまえみたいなのが隣にいたから、清く正しい愛に夢を見てたんだよ!」
「
目的地はあるけれど、適当に目についた店ものぞき込む。昼食を済ませたばかりでも、テイクアウトの新作スイーツなんかは、無視できなかった。ちょっと強引な、
「あはははは!
「ですがそれでは、他と差別化ができませんよ。あなたなら、なにを加えますか?」
「んー、そう言われると、きなこも
「冒険ですね。ではもう一歩進めて、ブランデー漬けの風味なんかいかがでしょう。
「
歩きながら、二人で大笑いした。同じように、楽しそうに歩く大勢の人たちの中に、二人も混じり合っていた。
宝石店のある建物は、伝統的な
婚約指輪は、ちょっと典型的すぎるのでは、という形を選んでいた。
反面、今日のもう一つの目的だった、
帰りにもう一度、時計台を見た。
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