3.ちょっと待って!
夕暮れの街は、あちこちの店の明かりが色づいて、淡い星空のような美しさだった。その星空に包まれた時計台は、満月をいただく銀色の
「宝石店は他にいくつもあるけど、この建物なら、きっとしばらく残ってくれるだろう? いつか、その……子供なんかが、生まれてさ」
「親ののろけ話なんて聞きたくないかも知れないけど、指輪を見せびらかして……ほら、ここで買ってもらったんだよ、なんて、テレビに映った時計台を自慢なんかしてさ」
二人の腕の間には、
「良いですね。かなり、完成形に近い幸せです」
「だから……こんなのは、もう駄目だ」
「この
「おまえを愛してる。これが
「おまえには、どう
「俺と一緒に、もう一度死んでくれ。ヒカロア」
「それでこそ勇者です。もちろんですよ、私のアシャス」
時計台も、淡い星空の街も
「私の、とかつけるなよ。恥ずかしい奴だな」
「言わないとわかってくれないでしょう、あなたは」
そのまま、身体も離そうとした。離れなかった。
「え……?」
「ちょ……ちょおっっと待ったああああッ!」
「な、なに? なんで? え?
「おとなしく
「い、いい、いや、あのね? お、俺たちは、もともと、こんな感じじゃなくて……」
「みなまで言うな!
「か、借りたものは返そうっ?」
「あたしの
「パク、って自分でつけたよねっ? そ、それから、友情は友情だよ? よこしまな目で見るの、良くないよっ?」
「あんな描写、作者だって、ねらって描いてるに決まってるわよ!
果てしなく
「すいません。
「えええっ? あれ? き、
当の
「それは、まあ……自分の身体ですから。でも、
「グッジョブよ、シンイチロー!」
「さすがに、驚きましたね……
参加者が増えて、合計四人分の
「ええと、ぼくからすると昨日の夜、起きたまま夢を見始めたような感じですね。時間も遅かったですし、お皿の片づけもちょうど終わったので、そのまま寝ちゃいました」
「ええええっ? き、昨日の夜から、そんな状態だったの?
「ますますグッジョブよ! とにかく、相手がシンイチローなら、なんの問題もないわ! あたしが許す! あらがえない
「か、
「そんなメンドくさいことは任せたわ!」
「ひどいこと言い切ったよっ?」
「彼女はああいう人物として……私が言うのもなんですが、
「
「よく言ったシンイチロー! 愛のおすそ分けってやつよね! なんでこうなってるのか全然わからないけど、あんたたち、あたし的にはすごく
「ちょ、ちょっと待って! 愛とか幸せとか、それ以前におかしいからね、この状況っ?」
誰が誰に向かって叫んでいるのか、わからなくなりかけていた。大体、自分という認識からおかしくなっているのだから、しようもない。
順応力の高い都会の通行人は、もう、こういうものとして二人と、近くに撮影機材がないかを見渡していた。
騒がしい二人四役の言葉が尽きて、
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