11.田舎育ちだからだよ!
中華料理店を選んだのは、個室が予約しやすいからだ。
「おい。おい、
「まあ、良いでしょう。問題ありませんよ」
「いや……そりゃ初対面だし、おかしく思われることもないだろうけどさ。心がけの問題じゃないか。
「どうしてそう、あなたはお堅いんですかね。慣れてくると、そこがたまらないのですが」
「田舎育ちだからだよ! 村社会は怖いんだぞ、こういうところ!」
「まあ、気にしないで大丈夫ですよ。どちらかと言えば、
ヒカロアもキーマン茶を飲んで、とりなすように笑う。
「
「へえ? そう言えば
アシャスの何気ない質問に、ヒカロアは、直接は答えなかった。
「つまらない人間からコネを期待されても、確かに面倒だったのでしょうが……今となっては、状況整理はむしろ、私たちの仕事です。
「え?」
「私も昨夜、直接お会いした時は、開いた口がふさがりませんでした」
肩をすくめるヒカロアの後ろ、
黒髪を
「お待たせしてすみません。
ヒカロアの
「理事長の仕事で使っている
「え……えええぇぇえ……?」
「さすがに
「私が言うのもなんですが、そこまでしますか」
ヒカロアを何段階か上回る
アシャスが呆然としている間に、
中国人が食べるのは中国料理で、中華料理は、日本人向けに日本でアレンジされた料理体系だ。食欲を刺激する匂いに、キーマン茶で一応、乾杯の格好をする。
「よろしくお願いします、女神です」
「知ってますよ」
アシャスとヒカロアが、同時に突っ込んだ。
「ホント、どこまでやっちゃってんですか、これ……現場監督どころか、がっちり当事者ですよね。大丈夫なんですか? その、ルール的な、世界の
「問題ありません。私が
「神らしい
アシャスとヒカロアのあきれ果てた視線に、
「捕食は生命の
「自分が
「心外です。後々までの影響力を考慮してですね……まあ、せっかくですので、家柄と財産と容姿を、自分特典で全部盛りしました」
「
私立大学の理事長ともなれば、各方面への
それだけでも充分に金持ちの道楽っぽいが、
「結構な仕込みですよね、まったく……あ、あれ? じゃあ、亡くなったお父さんも、まさか計画の邪魔になったから、とか……」
「重ねて心外です。私をどんな目で見ているのですか」
「相手は正直、どなたでも良かったのです。候補者の中から、遺伝する才能をそれなりにお持ちで、計画進行の邪魔にならない、適当に早死にしそうな方を選んだだけですよ」
「
「女神ですから。あなた方も、もっと感謝してくれて良いのですよ?」
ヒカロアの皮肉に、ふん、と鼻息を吹いて、
「いやもう、魔王や四天王もそうでしたけど……そんな便利に選べるんなら、俺たちの時にも言って下さいよ……」
「あなた方の転生を、何度も繰り返す中で身につけた技術です。継続は力ですね」
「神らしくない
「とにかく、ここまでこぎつけられたのは、ようやくなのです。運命のぷろじぇくとりーだーとして、新郎の母、新婦の恩師として、私も感慨無量です。百三十八億年の悲願達成に向けて、あなた方も気合いを入れ直して下さいね」
恩師という自称には微妙だが、アシャスはなにも言わなかった。そんなのは、本当にもう
フカヒレのかたまりに豪快にかじりつく
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