10.幸せを実感しています。
「イメージはさ、やっぱりピンクが外せないのよ! でも、ピンクと白でふわふわって、ちょっとイタい年齢だし、難しいのよねー」
「
「ふぉ! 時々、
「気になるなら、濃いめのグリーンかブラウンを入れると、落ち着いた雰囲気になるってエグゼクシィにも書いてあるよ。プランナーさんに相談してみようよ」
「前から思ってたけど、なんで結婚情報誌なのに、そんな強そうな名前なのかしらね」
当のホテルのレセプションホールで、
この週末は、ウェディングプランナーと、ホテルで打合せだった。少し早い時間に来て、二人で勝手にあちこち見て回る。
いや、正確に言えば、人格は四人分だ。
「パーティー会場の飾りつけなんて、そんな気にするもんかなあ。適当に花でも置いておけば、充分じゃないか」
「あなたは舞踏会も祝典も、
「上流階級の礼儀作法なんて覚えられないよ。おまえみたいなのと、育ちが違うんだから」
アシャスとヒカロアの雑談に、
「なになに、ヘナチョコとヒカっちって、身分差もあったの? 属性、重ねてくるわねー!」
「なんか言い方が引っかかるけど、こいつは貴族のお坊ちゃんだよ。金持ちで顔も良いから、女の子に手が早くてさ」
「ヒカロアさん、そんな感じですよね。それがどうして、アシャスさん一筋になったんですか?」
「
「ヘナチョコ、墓穴ー!」
「そうですね。自分でも不思議ですが……出会った瞬間には、もう
「おまえ、それをあの
「時効です」
アシャスの嫌味を、ヒカロアが、しゃあしゃあと流す。百三十八億年も
「それにしても、前も話に出てきたそのお姫さま、扱いが雑よね……勇者とお姫さまなんて、王道中の王道なのにさ」
「ゲームと一緒にするなよ。王権制度って、厳しいんだぞ」
「民衆的には、完全に既成事実でしたけどね。アシャスは他にも、この人柄ですから、私なんかよりよほど老若男女に敬愛されて、大変でしたよ」
「ヒカロアさん的には、会う人みんなライバルみたいなものだったんですね」
「
そうこう腹話術で騒いでいるうちに、予定の時間になった。
ウェディングプランナーは、さすが的確に、二人のイメージや希望をすり合わせていった。
打合せ中は当然、アシャスもヒカロアも黙っていた。
アシャスなどは、料金表を見てめまいをこらえたが、
式と
・プロポーズ(済!)
・両家に事前連絡、式場/挙式の日程を決める(済)
・新郎家族に
・ドレス試着/仮予約
・新婦家族に
・両家顔合わせ
・挙式
前二つは済んでいるのだから、今さら不要だが、
「ねえ、ちょっと! スイートルームだってよ? 盛り上げてくれるわねえ、プレミアムな
「大声で言うなよ、そんなこと!」
結婚式当日、特に新婦の
そこでその後の一泊、スイートルームを確保して、会場と控え室からホテルスタッフが荷物を運んでくれるサービスを提案された。
「エグゼクシィのランキングも、
「どこの外国かぶれだよ? やられてたまるか、そんなこと」
「あはは、ブライダルカーも素敵だよね、
「ここでは難しいでしょう。仕方ありません。
「やめろよ! 恥さらしにもほどがあるぞ!」
「ナシじゃないわね……そのうち、後ろ半分だけお願いするわ! 最後にベッドに、ボスンって落とすやつ!」
「
「あ、今夜でも良いのか。んっふふふ、知ってるだろうけど、今日はここにお泊まりデートよ? スイートルームとは、いかないけどさ」
「
「こんなこと言ってるよ、ヒカっち」
「幸せを実感しています。新婚生活が楽しみですね」
「ヒカロアさん、強いですね」
「仕方ないなあ! それじゃあ、夜はあたしたちがイチャイチャするから、今日これからは、あんたたちにお任せするわ! じゃあねー!」
「え? あ、おいっ? なんだよ、急に?」
「急に、ではありません。前にも宣言していたことですが、なかなか見事な誘導と
言われて、アシャスも記憶をたどる。すぐに合点した。
今日、このホテルに部屋を取ったのは、そうするだけの予定があったからだ。
明日はここの式場で、貸し衣装の試着をさせてもらう。挙式は先だが、人気のあるデザインは、早めに予約しておく必要があった。
そして今日これからは、このホテルの中華料理店で、
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