7.しなくて良いよっ!
「聞きたい、と言いましたね、アシャス。お話ししましょう。まあ、茶飲み話として聞いてください。あの
「は? はあ……」
「およそ旧世界のあなた方と
「はあ」
茶飲み話としては、アシャスにも
「苦労したんですよ、ここまで来るの」
「まったくだ。この女神、やることなすこと、
ミツヒデが横から、これまたスケールの大きい茶々を入れる。猫なりに、ため息が重々しい。
「人類史への介入も、滅茶苦茶だ」
「私だけのせいじゃありませんよ。基本的に、アシャスが悪いです」
「お、俺ですか? なんで?」
急に
「実のところ、転生はこれが初めてではありません。平和な世界で
「なんですか、そのキャッチフレーズっ? 願いごとが混ざってます! 二人の合意みたいに言わないでくださいよっ!」
「イケるッ! それ、
「
「……あれ? 何度でも? それじゃあ、今まではどうだったのよ、あんたたち?」
「ぶっちゃけて、失敗続きだったのです。アシャスの愛が足りません。せっかく女神演出の、運命の二人ですのに、出会う前に死んだり、
「お、男同士だったんだから、当たり前でしょう!」
「なに言ってんの! その当たり前を、愛で踏み外すから
「おまえだって、ファースト
「ぎゃーっ! それ言うな!」
客観的には腹話術でケンカするアシャスと
「とにかく、やっと記憶を戻す最終段階にまでこぎつけた、ということだ。推測するに、
「こんな複雑な状況で、無責任に
「愚問ですよ、アシャス。あなた方の人格が願いの
「そ、それわかってて、やってたんですかっ?」
「
からかうようなミツヒデの声に、
直近で体感している
「ねえねえ、ミツヒデ。それじゃあさ、あんたは今、どういう立場なのよ? もしかして、ヘナチョコに最後に振られる、ライバル枠?」
「悪くないな。いずれ槍使いにも、そう
「冗談やめろよ! おまえ今、猫だろう! ヒカロアに
「ほう?
「おお、
「努力しよう」
「しなくて良いよっ!
「そんな
「か、関係ないだろっ?」
「大ありです」
ずい、と
「この一大ぷろじぇくとの達成目標は、あなた方の結婚とそれに
「おかげで延々と、この
ミツヒデの黄金色の目が、にやりと細くなる。
「まあ、こうして復讐がてらの自由を前倒しで手に入れた以上、もう
「それでは困ります」
「前倒しというのは
「認識が甘いな。義務も責任も、猫には、もっとも縁遠い言葉だぞ」
ミツヒデが、するりとソファを降りて、窓に寄る。前足で器用に、鍵と小窓を開けた。
「あ、おい! 高層階じゃないけど、気をつけろ! マンションまでも結構あるぞ、ちゃんと帰れるのか?」
ほとんど反射的に出たアシャスの言葉に、去り際のミツヒデばかりか、
「
こほん、と
「
「あー、まあ、いろいろ
「気を悪くされましたか?」
「別に。ちゃんとわかったわけじゃないけど、あたしはあたしで、ヘナチョコもあたしなんでしょ? それでいろいろ手伝ってくれるんなら、まあ、ありがたいわ。課長もさっきなんか言ってたし、これからもよろしくお願いします、ってことでさ」
まともな感覚では、そうはいかない。何度も繰り返した転生とか、運命とか百三十八億年とか、
嵐のような来客対応が終わって、アシャスはもう、なにを言う気力もなくしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます