第7章 ヴァルキリーの贈り物
その日の夜、誰もいない校門前で、頼子、理恵、千鶴の3人は途方にくれていた。
頼子はジョックスや伽耶子とのやり取りをすべて、洗いざらいこの2人の親友に話したのだった。
重苦しい雰囲気が3人を包んでいた。
明日の決闘には仲間を2人まで連れて行けるという話を聞き、その仲間に理恵を千鶴は申し出たのだった。
だが頼子はその申し出を拒否した。
頼子「だめ…だめだよ!二人とも…死ぬのは私だけでいいの!」
理恵「頼子ちゃんだけにつらい思いはさせないよ!」
千鶴「勝ち負けが問題じゃない…頼子ちゃんだけ死なせるなんて、私にはできない!」
頼子「ありがとう理恵ちゃん、千鶴ちゃん。うれしいよ、うれしいけど…!」
貞子に勝てないのはわかっている。
3人どころか、1000人でかかってもまったく勝負にならないだろう。
そもそも貞子のパワーとタフネスは人間離れしている。車に轢かれたところで、車が吹き飛ぶくらいの強さを持っているのが貞子である。
3人の女子が戦ったところで何になるというのか。
頼子は絶望した。どうしようもなかった。
親友たちの思いが、かえってつらかった。自分を大事にしてくれるのはうれしかったが、そのために2人まで死ぬことになるかもしれない。
もともとジョックスの申し出を受けたのは自分なのだから、自分だけが責任を負えばいいことなのだ。
頼子たちの目の前に、戦乙女ヴァルキリーの銅像があった。
ふと頼子はこの学校に伝わる伝説を思い出した。
「けがれのない乙女がこの像の前で祈りをささげると、かなわぬ恋を成就してくれる」
頼子「私は…けがれていない乙女なの?」
頼子はヴァルキリー像に向かってひざまずき、両手を胸に合わせて心の中で祈った。
頼子(戦いの女神ヴァルキリーさま。どうぞ私のかなわぬ恋を成就してください。そしてこの2人、私の大切な親友の命を守ってください。どうかお願いします、お願いします…)
だが何も起こらない。
夜なので周りは静かだった。11月過ぎなので、ずいぶんと寒くなってきた。
理恵「頼子ちゃん、もう帰ろう?」
千鶴「明日のことは明日、また考えよう?」
頼子「うん…」
頼子たちが帰ろうとしたそのときだった。
??「お待ちなさい」
頼子「え?」
どこからか声がしたような気がした。
頼子「誰か私を呼んだ?」
理恵「え?なんのこと?」
??「迷える乙女よ、お待ちなさい」
頼子「確かに聞こえる…」
頼子はヴァルキリー像の前に戻ってきた。
頼子「私を呼んだのは、あなた?」
ヴァルキリー「そうです。頼子、あなたはとてもきれいな心をもっていますね。私からの贈り物、受け取りなさい」
頼子「贈り物…」
そういうや否や、空から一つの段ボール箱が落ちてきた。
頼子「こ、これは!?」
ヴァルキリー「がんばるのですよ、頼子」
そういうとヴァルキリーの声は聞こえなくなった。
理恵「ヴァルキリーからの贈り物…」
千鶴「ヴァルキリーの伝説って…本当だったんだ」
頼子「この段ボール箱の中に…」
頼子たちは段ボール箱を開けた。すると中にはおもちゃ店にあるような大きな箱が入っていた。
その箱には「魔法少女変身セット」と書いてある。
頼子「魔法少女?コスプレ衣装?」
理恵「何いってるの!ヴァルキリーからの贈り物よ!ただのコスプレ衣装なわけないでしょ!」
千鶴「開けるのよ…これはきっと、本物の魔法少女に変身できる装置!」
中身を開けると、衣装らしきものはどこにも見つからない。
しかしそのかわり、ルビーのような赤い宝石が3つあり、さらに冊子「魔法少女変身セット取扱説明書」が同封されていた。
頼子たちは説明書を読んでみた!
頼子「こ、これは…」
理恵「なんてこと…こんなことが…」
千鶴「頼子ちゃん…」
頼子「やっぱり…こんなことに2人を巻き込むわけには…」
理恵「何いってるの!頼子ちゃん、私たちはいつもいっしょだよ!」
千鶴「いいの、いいのよ頼子ちゃん。私は頼子ちゃんといっしょなら…」
頼子「みんな…」
3人はそれぞれ宝石を一つずつ持ち帰った。
そして…決戦の時がやってきた!
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