第3章 伽耶子

伽耶子(かやこ)はチア部の副部長である。よって校内カーストの身分としては、チアに次ぐ。

伽耶子は大変な美少女だった。ただ運がいいことに、貞子は自分が伽耶子よりも美しいと思っていたので、貞子の妬みを買ったりはしなかった。


伽耶子の役割といえば、貞子の側近である。貞子の最も信頼している部下、といっていいだろう。


チアにはさまざまな「やるべきこと」がある。

これらミッションに対し、まず貞子が何をするべきかを決める。それを受け、次に伽耶子がこれらを適切に役割分担し、ほかの者たち(チア部員や運動部の女子たち)に振り分けるのである。


伽耶子も貞子と同じかそれ以上に頭脳明晰だった。だがそれ以上に、伽耶子が貞子の側近として居続けられるのには、伽耶子の重要なある「才能」が関係していた。


伽耶子は、貞子の「キレる点」を、ほかの誰よりも早く察知することができた。要するに「誰よりも空気が読める子」なのである。

いつキレるかわからない貞子の側近という役割は、非常にストレスフルな仕事である。ヘマをすれば貞子の怒りが自分に向けられるかもしれない。

ほかのチア部員たちにはこの危険な仕事は不可能だった。伽耶子だけがこの仕事をこなせた。

おかげで伽耶子は貞子のもっとも信頼する部下となったのである。


もちろん伽耶子とて、常に100%貞子の「キレ」を防げるとは限らなかった。

しかし長年付き添った間柄なので、貞子がいかにキレようとも、伽耶子に八つ当たりするというようなことはさすがになかった。貞子もそこまで理性を失うわけではなかった。

また伽耶子からしても、貞子から校内上位の優秀かつ美形の男子を彼氏として与えられたりと(チアの権力を持ってすればこれくらいはたやすい)、見返りも大変に大きかったことも、副部長に居座り続ける理由になった。


貞子と違い、伽耶子は基本的には「まともな子」である。

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