第107話 2歳半編⑱

 ダンシュタや、ナッタジ村(ナッタジ邸から、奥のいつもの村を、最近こう呼ばれるようになったんだ)で、カバヤ親子の排除が知られ、そしてエッセルの孫が帰ってきた、という噂が浸透した頃。

 うん、ほんとうは、僕はひ孫なんだけどなぁ。何故かエッセルの孫の坊ちゃまぼっちゃまとして微妙に知られてしまったよ。でもまあママが帰ってきたら誤解は解ける。それと、前世平民、今世家畜奴隷出身の僕に坊ちゃまはやめて欲しいんだけど・・・今、ダンシュタで単に「坊ちゃま」と言うと僕のことらしい。宵の明星のメンバーまでふざけてそう言うから、僕は最近とっても機嫌が悪いんだ。


 一応、ダンシュタにはナッタジ商会の本店(といっても他の店舗はないから、ここだけだけどね)があって、商売はやんなきゃならない。番頭や幹部はほとんどカバヤの取り巻きで、ろくに商売が分かってもないのに偉そうにだけはしていて、まったく使えないみたい。使えないどころか、カバヤ達と一緒に牢屋にいる者も多くて、困った状態。

 そこで、ある程度商売のお手伝いもしたことがあり、家畜奴隷時代にこっそりと人を回していたアンナが、仮の責任者として商店を回すことになった。事務作業が得意なヨシュ兄が補佐をして、たった半月とはいえ、なんとなくダンシュタの町が明るくなった気がする。



 僕が有名になったこともあり、まともな(?)憲兵さんに、いろいろバレてしまった。僕が宵の明星のメンバーの見習い冒険者、間もなく3歳であること。生まれはナッタジ邸の家畜小屋であること。本当はエッセルのひ孫であること。ナッタジを取り戻すため、憲兵さんにも嘘を言ってたこと。そして、ブレスレットのことも。

 文句を言われたり怒られたりするかと思ったけど、残った憲兵さんの評価は僕もビックリするものだった。まるで英雄に対する扱いで、困っちゃった。

 「よくぞその幼さで、巨悪に立ち向かった!」

 「我々を手玉に取るとは、さい先楽しみだ!」

 「このブレスレット、返さなきゃだめ?」

 そんな感じ。

 最後のは・・・いいのかな?GPS機能あるんだけど・・・

 「坊ちゃましか使えないなら、むしろありがたい。何かあったら協力お願いします。」

だって。

 防御力アップ機能に追加して、いざという時の居場所探知は、むしろありがたい、そうです。だったら別にいいけど・・・



 ゴーダンとセイ兄は、どうやらミサリタノボア子爵や憲兵と、町の治安を中心にいろいろやってるみたい。

 詳細は知らない。

 でも、間もなく僕を含めて3人で、王都に向かうことになってる。

 久しぶりにママに会えるんだ!

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