第88話 2歳編㉒

 王様の所から、僕とゴーダンはみんなと別れてドクのもとへ。

 他のみんなは、とりあえずリッチアーダのお屋敷に戻って、そのままママ以外はトレネーに戻る準備をする。ママは当分、商会のお勉強をすることになったんだ。僕たちはナッタジ商会を取り戻す気満々だけど、取り戻した後のことも考えなきゃならない。ちゃんと商会が運営できるようにママはがんばるんだって。僕もママを支えるつもり。

 でも、もちろん今すぐには無理。

 ちゃんと正式にママの下に商会を戻さなきゃね。

 そのためにも、トレネーで色々と探るため、他のメンバーが一足先に領に戻ることになったんだ。


 もちろん、僕やゴーダンも行く。

 まずは、鍵を完成させないといけないから、王都で僕らは居残り。

 玉のある場所は分かったし、取り戻す段取りも飛び込んできた。でも、さすがに結界の要になるものなら、ちゃんと作動できるようにしておかないと、養成校ひいては王都が危険だから、ドクとそのへんを確認しつつ、取り替えをすることになったんだ。どっちにしても僕の魔力を隠す魔導具が出来るまで、僕は待たなきゃなくないしね。



 そして、今、再びのドクの部屋。

 「いや、別に替えるだけでええぞい。」

 僕らが、まずは旗頭の置き換えと結界の話を聞きに行ったら、ドクはそんな風に答えた。

 「いや、魔導具の設定とか、いるだろう。」

と、ゴーダン。僕も横でうんうん頷く。

 「別に旗頭に仕込んでないしの。」

 ホッホッ、と、ドクは笑った。

 「養成校の敷地をすべて覆う結界じゃぞ、そんな旗頭みたいな小さい魔導具でできるわけがないじゃろ?」

 にやっとドクが悪い顔で笑った。

 え?でも、王様が・・・

 「結界はあるがの。起動の魔導具は、旗の竿と、それの建っている塔の屋根全体じゃ。」

 「じゃあ、旗頭は?」

 「エッセルのいたずらじゃな。」

 いや、いたずらじゃな、じゃないよね。隣でゴーダンが頭抱えてるよ。

 「あのじじいならやりかねんか・・・」

 「奴の後継者が儂の生きている間に訪れたら、あれを渡してくれ、と言われてての。その後のことは、まぁ知らんがのぉ。無事アレクが来てくれて肩の荷が降りたわい。」

 いや、なんか、ひいじいさんが、すんません・・・

 「で、その話、王は?」

 「知らんよ。」

 え、いいの?

 「この結界の案もエッセルじゃし、作ったのは儂じゃ。起動自体は魔力を通せばできるように作っておるから、王宮も理事も各学長も知っているが、魔導具が塔の屋根だということを知っておるのは、儂ら二人だけじゃったからな。おまえ達が今知ったから、倍増じゃの。ホッホッホッ」

・・・・



 その後、僕用の魔導具の最終調整とか言って、なにやら計られた後、僕たちは、とりあえずドクの部屋を後にしたんだ。ただの旗頭でしかない旗頭の交換をして、玉を手に入れる。ついでにパフォーマンスで結界を起動してみせることになったよ。結界を起動する以上、養成校にも関係あるから、と、その辺の日程調整で少々足止めをくらうらしい。この辺の細かいすりあわせは、各養成校のスタッフとかとドクがやってくれるんだって。まさかのドクが魔導師養成校の現学長だとか。正直マッドがかってて、きっと窓際さんだよ、と思っててごめんね。

実は結構エライ人だったんだね。

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