第86話 2歳編⑳
玉の回収の話だけじゃなく、みんなのこの数日の行動の報告もしたよ。
僕からは、ドクに魔力制御を教えてもらったけど、いろいろ魔法を作ったりしてたらもっと魔力が増えちゃって、プラマイゼロを超えてしまった話、とか、魔力を完全に押さえるのは肉体的に無理だから、魔導具にためてしまおう、ということになってるけど、その魔導具がもうちょい貯められるようにしなきゃだめだ、ということで、今持ってる容量不足のプロトタイプを見せたよ。これはペンダントになってるんだけど、ちょっと重い。それで、できればブレスレット型にしてもらうことになってる。
みんな、やれやれ、という顔をしてたけど、新魔法には興味津々。そのうちゆっくり披露するね。
他のみんなは、ママの誕生日後の襲撃事件を調べる班と、ナッタジの現況を調べる班にほぼ分かれてたみたい。
ほぼってのは、ママが別行動だったから。ママはリッチアーダ商会で勉強中。計算が速いってびっくりされてるんだって。四則計算なら、番頭さんより早いかも、だって。実は九九が超役に立ってるらしい。そりゃ一点ものばっかりじゃなくて、これが5個とこっちの10個ください、って人、多いもんね。
それで、商業ギルドで登録したんだけど、簡単な筆記試験で高得点たたき出した、らしい。しかも大商人が身元保証人になってるし、とっても美人さんで明らかに魔力多そうな髪だし、まぁ、色々話題の人になってるんだって。これは商業ギルドに潜入中のヨシュ兄からの話だけどね。
身元保証人のトーマさん、色々聞かれて、「あれは姉の孫です。」と堂々宣言。ニアさんという僕のひいばあさん、未だに有名人。襲撃事件のこととかも、そろそろみんなの口に上り始めてる、らしい。今のところは、噂。でも、商人は情報をとっても大事にする。ママは「ミミセリア・ナッタジ」として、トーマさんのもとで修行中の駆け出し商人として登録されたから、そりゃみんないろいろと口に上らせてくれるだろう。ナッタジのあるトレネー領に噂が行くまで、そんなにかからないだろうね。さて、現ナッタジ商会の主殿はどうするか、そういう作戦でもある、らしい。
襲撃事件そのものは、トレネーでの話だから、正直、いまだに王都で興味を持つ人はいない。盗賊に一族郎党皆殺し、なんて悲惨な事件だけど、残念ながら、ありふれた事件でもある。トレネーでは大商会なんで、そこそこ話題になってるし、その後のナッタジ商会の評判が落ちてるから、当時を知る人はそれなりにいるけど、あくまで一地方都市の話。
ただ、あのときは、トーマさんはじめリッチアーダ商会から人が来てて、それなりの騒ぎになったし、商会の継承の関係もあって、王都からもいくつかの調査が入ったみたい。国、というより、商業ギルドとか、ね。それにリッチアーダ商会には王都から護衛についた高ランク冒険者のパーティもあったから、その人達も調査に協力してた、みたい。その当時の人に会いに行ったり、してたんだって。
お互いに、そんな報告をして、今後をああだこうだ、言っていたら、来客が告げられた。
宵の明星あてに、なんだろう?そう思っていると、指名依頼があるから、ギルドに出頭せよ、という話でした。
リーダーと副リーダーの二人で、ギルドにいっちゃったため、とりあえず、解散、だね。
ということで、夕方です。
「明日、王城へ行くことになった。」
えー?
「依頼は、養成校理事長。ちなみに王立養成校なので、全養成校の理事長は名目上は国王だ。」
「我々が忍び込もうとしているのがバレたのでしょうか。」
ヨシュ兄が居残り組の疑問を代表して聞いた。
「いや。あくまで養成校に関連した依頼を直接王城にて話す、ということだ。」
タイミングが良すぎて、気持ち悪いけど・・・
「あの王のことだ。ダーのことがバレたのかもな。」
「ダー君、ですか。」
「ああ。例の襲撃事件の後、じじいの後継者、について、根掘り葉掘り聞かれた・・・まぁ、ほとんどの応対はワージッポ博士がしたし、俺はその場にいただけなんだが、な。」
「どっちにしても、明日は全員で王城に行くからね。そのつもりで。」
アンナの一声で、明日の予定はきまったんだけど、王城か。家畜小屋で産まれて2年。遠くまで来たなぁ。
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