第77話 2歳編⑪

 その後は、もうひいじいさん、あきらめたみたいだった。

 うん。普通の(?)ダンジョン。

 つまりは、この辺りの地形を利用し、環境を利用したダンジョン。

 70階ぐらいまでは、砂漠で出会ったもろもろだったよ。

 サソリとか、ワームとか、アリクイとか、そういう系の魔物。

 ちょっと違うのは、申し訳程度の罠とか宝箱が時々あるくらいかな?

 スイッチ踏むと、大玉が転がってきたり、槍や矢が飛んできたり・・・


 下に行くほど強くなるのも、通常通り。

 徐々にママの仕事が増えてきた。

 だから、余裕を持って探索してる。

 早めに隠れ家に帰って休憩は欠かせない。


 70階を超えた辺りで遺跡からの魔物、かな?いわゆるアンデッド系、というやつです。でも、ちょっと複雑だよね。ここの隠れ家はアンデッドの皆さんが管理してくれてるし。そりゃグールとかそういうグログロしたやつは平気だけど、スケルトンとかは、ねえ。

 そんなふうに言ったら、隠れ家のみんな、ダンジョン内のは魔物で、自分たちとは別物だ、と言うんだ。その辺の割り切りは、僕にはわからないけど、気にしないでやっつけて、と応援されたから、うん、がんばるけどね?



 ダンジョン攻略してて、けがが一番多いのは、セイ兄かな。とにかく特攻型だから、よくけがもする。ママに治療してもらいたいだけ、とか言ったら、僕の魔法をぶち込むよ。

 次はミラ姉。

 ミラ姉は中遠距離は風魔法だけど、近場は剣。舞うようにきれいだけど、力負けすることは多々ある。砂漠の魔物は固いのが多いから、ちょっと跳ね返されがち。で、怪我しちゃう。

 不思議に怪我もしないのがヨシュ兄。

 ふつうに剣で打ち合うと、ミラ姉より断然弱い。なのに、魔物戦では、怪我をしない。穴ぼこ開けたり、目くらまししたり、デバフかけたりが得意なのだけど、結構接近戦もしてる。誰も気づかないうちに、関節とかを中心に傷つけて離脱、といった戦い方だから、怪我する前に戻ってくるのかもね。


 他二人は、ママのお世話にはなってないかな?

 ゴーダンはとにかく強い。

 重量級の突進とでっかいごっつい剣から繰り出される重い攻撃。切るというよりは、打撃といった感じで、その魔物は鎧の材料だよという場合でも、陥没させられる。でも陥没させては、アンナにしかられてる。価値が下がるんだって。陥没させず、関節とか柔らかいところに攻撃して殺すことができる技量はあるけど、戦ってると面倒くさくなって、ドガン!とやっちゃうらしいよ。人に考えて戦え、とか偉そうに言ってるけど、一番の考え無しはリーダーだね。

 ゴーダンは魔法もうまい。けど、本当はそんなに魔力量は多くない。といっても、ミラ姉とはるんだけどね。このチームでは、剣7魔法3ぐらいで使ってる。大きな魔法が使いたいときは、僕の魔力を使うという裏技で、僕がやるよりうまくやっちゃうんだから、嫌になっちゃうね。

 アンナは火魔法がうまい。けど、相手が強くなるとでっかい火を出さなきゃだから、周囲の影響を考えると、なかなか使えない。剣の技量もなかなかで、セイ兄とミラ姉の間ぐらいの強さ。うん、むちゃくちゃな人です。戦闘が始まると、基本司令塔やってる。アンナの出す指示は的確で、いつも感心しちゃう。おおざっぱなことはゴーダンが決めて、実際はアンナがやってる、て感じで、本当は一番すごいんじゃないかな?


 僕とママ?

 基本的にはアンナといる。

 ママは怪我した人の治療と、誰かが危ないときに、魔法で盾を出すのが主な仕事。僕はママを守ること。と自分では思ってるんだけど、単なるお荷物かも、と思うときがなくもない。

 とりあえず、強すぎてしんどいかな、という時とか、数が多すぎて範囲魔法の方が良いかな、という時、アンナの指示で、できるだけ押さえたでっかい魔法を撃つ。変な言い方だけど、まさにそう。でっかくないと役に立たないけど、押さえないと、こっちにも被害が来るからね。

 一度土魔法でがんばったら、ダンジョンが崩壊した。仕方ないので、今は水と風だけが許可されてる。水は全部流れちゃって魔石も拾えなかった、とか、風でダンジョンの壁が抜けた、とかちょっぴりのやらかしはあったけど、それはご愛敬、てことで・・・ぐすん。魔法も剣もダメダメな僕です・・・



 そんなこんなで、むしろみんなの連携を確かめることが中心になってしまったダンジョン攻略。けっこうな日にちがたったけど、やっと実質的最下層80階へとたどり着きました。

 昨日、帰ったときにローディに教えられたんだけど、80階の魔物だけは、ひいじいさんのロマンで譲れないもの、なんだって。

 ちなみに81階からは、階段がない。転移の魔方陣で移動するんだって。100階の隠れ家フロアに誰も来させないために安全パイをとって20階層入ってる、とのことだけど、単に管理が大変だから、じゃないかな?というのが僕の予想。この謎の20階分は、彼ら管理人たちのプライベートスペースだとか。いつか行くことができるのかは、謎です。



 さてさて、80階。ひいじいさんの、たっての願いのダンジョンボス。ひょっとしたらあれかな?と思いながら、昨日見つけた79階からの下り階段を降りていき、80階。重厚な木造風の門が待ち構えています。


 「おそらくここで最後だ。」

 ゴーダンがみんなの顔を見回して、言った。

 全員、力強く頷く。

 真ん中から両開きの大きな扉。ヨシュ兄と、セイ兄が大きな取っ手を持ち、ズンと押す。

 ギー

 鈍い音がして、ゆっくりゆっくり、扉が開かれた。


 そして、やつは、そこに鎮座していた。

 大量の宝物の山を背にして。

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