第75話 2歳編⑨
なんとか無事2個目をゲットできた翌日、再びダンジョンに戻ったけど、みんなの評判はあまり良くなかったかな?
この世界では、2足歩行で服を着たものを魔物認定するのは倫理的に辛いらしく、しばらく続いた、ゴブリン、コボルト、オーガ、オークといった定番魔物に躊躇していたよ。
そうは言っても、ママと僕以外、兵士だとか騎士だとかの経験者。対人間の戦闘経験豊富ということで、魔物としてではなく、人としての敵認定で気持ちを切り替えて、無双してた。
そして、順調に攻略を続け、3個目。コレは宝箱部屋で見つけたよ。
その宝箱部屋、33階にあったんだけど、半分ミミック。残りの半分が、ガス入りの罠。眠りや痺れ、くしゃみがとまらない、といったものが主だったな?何が凄いってママとセイ兄。
ママが開けると、ハズレとはいえ、ふつうの箱。セイ兄は、ほぼほぼ罠。
他は、さっき言った確率からほとんどズレないのに、この二人は凄い!
最終的に残り3分の1ぐらいのときに、ママが当たりを引いて、玉が出た。念のため、その後も全部開けたよ。
この宝箱部屋の下は、もうダンジョンとか無視だった。たぶんひいじいさんのネタがつきたんだろうね。まさかの33階から41階までは日本の妖怪シリーズ。しかも無害!
池の中から出たカッパとセイ兄が相撲したり、ゴーダンとろくろっ首で、なぜかお酒の潰し合いをしたり、現れたのっぺらぼうにママが顔を描いてあげたり、小豆あらいとアンナが、豆談義をしたり、さとりとヨシュ兄が夜通し語り合ったり、かまいたちとミラ姉が模擬戦したり、とまあ、平和に楽しく降りていったよ。
で、42階。まさかの、地獄編でした。おそらく三途の河原。髪の毛を取り乱したおばあさんに言われて、僕は石をつまされた。コレができたら、川を渡らせてくれるってこと。さぁまもなく完成!てところに、2匹の鬼が現れて、潰しにかかる。本来なら、潰されて、また一からを繰り返す、が、正解だろうけど、うちの人たち強いからね。ゴーダン&ミラ姉の無双で返り討ち。その間に完成!
戸惑うおばあさんにヨシュ兄が、ニコニコ交渉。無事舟を出してもらって対岸へ。
対岸には、いかにもな、中華風の建物に人が並んでて、僕らもそこに並ばされた。
前まで行くと、これもベタな閻魔さま。
正直に答えよ、と、何か巻物を見ながら言う閻魔さま。
でも、みんな閻魔さま知らないもんね。今まで服を着た二足歩行は、とか言ってたけど、えらそうな鬼は即敵認定しちゃってるよ。ここにくるまでに、忍耐力はほぼ枯渇状態。
「あ、あった。」
しかもママが発見!閻魔さまの前には机があり、先ほどの巻物と一緒に書道セットみたいなのが置いてある。その硯の横の文鎮、間違いないね。探し物、発見です。
「閻魔さま、その文鎮、下さい!」
みんな今にも武器をふるいそうな雰囲気。平気な顔をしてるけど、閻魔さま、かなりブルってるよね?僕としては、閻魔さまのボコられるシーンとかないなぁと思ってしまったので、何とか平和的に済ませたくて、思わず声をかけちゃったよ。
「あ、いや、コレは公共のもんじゃし、上げられん、かな?」
びびってるからか、微妙な言い回しの閻魔さま。
「なら、力づくで貰うまで。」
セイ兄が剣を抜いた。
えっ?と閻魔さま。
そこに獄卒達がやってくる。
他のメンバーも抜刀。やる気まんまんだ。そりゃ負ける気しないけど、僕的には、どっちもやられて欲しくないなぁ。
そんな風に思ってると、ママが一歩閻魔さまの前に近づいた。
「どうやったら貰えますか?力づくで貰うのは悪いことなんで、ダーには見せたくないんだけど。」
冷や汗の閻魔さま、ママの話に飛びついた!
「そうじゃ。人のものを力づくで奪うのは悪いことじゃ。地獄に落ちるぞ。」
「でも、それ欲しいです。」
「なら、貴様の真実を見せてみよ。ならば、くれてやっても良い。」
「真実?て、何?」
「そうじゃな。自分の命と引き替えにしても手放せないものはなんだ?嘘偽りは、我には通じんぞ。」
「ダー。」
「いや、よく考えてからで良いぞ。」
「ダー。」
「命と引き替えじゃぞ?」
「ダー。」
閻魔さま、冷や汗止まらない。タジタジになりながら、水晶を覗く。
「私の全部はダーでできている。私の真実もダーでできている。自分の命とダーなら、ダーが大事。」
淡々と言うママ。
「あ、そうみたい、じゃな?」
「ダーはその玉が欲しい。くれないなら奪う。いいよね?」
そう言いながら、ママは短剣を抜いた。
「ちょ、ちょっと待て。これやる。やるから、皆の者、物騒なものはしまえ!」
あーあ、閻魔さまほとんど泣いてるよ。
くれるって言うし、みんな殺気引っ込めてよね。盗賊になる気?
「ダンジョンの魔物相手に問題ないですよね?」
はぁ、さいですか?
ママはニコニコ、文鎮もとい玉をもらってるよ。
「さっさと出ていってくれ。生者のくる場所ではないわ。」
と、僕らは強制退出させられちゃった。
部屋を出ると、そこには下に通じる階段が。
ちょっと疲れた。玉も手に入れたし、おうちに帰ろうか。
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