第73話 2歳編⑦

  無事セイ兄が戻って、再びダンジョンへ。

 あの、宝箱部屋へ戻ってきたよ。全部開けたのに、また全部閉まってた。

 開ける?もう開けないよね?

 みんな、もううんざりなんで、階段と逆側の、なぜか取り付けられてる扉に向かいます。

 「取っ手、見た方がよくない?」

 おお、ママ、さすがです。同じような丸いドアノブついてるもんね。

 ・・・・

 そうは都合よく見つからなかったよ。


 ドアの向こうはちょっと怖い道でした。

 なんというか、僕の身長と同じくらいの道幅で、その両端は穴。

 ていうか、これは橋、なのかな。一本道でかなり遠くにこっちのと同じようなドアが見える。橋の両側は、覗いても真っ暗でした。

 落ちたらどうなるんだろう?

 アンナが、何か石みたいなのを投げ入れました。

 ・・・反響音、しません・・・

 「これはなんだな。落ちたらダメな奴だな。」

 ゴーダンじゃなくても、わかるよ。

 みんなで覗いてたら、最前列にいたヨシュ兄が、

 「何かくる!」

 て、緊張した声をかけてきた。

 ここの魔物は僕の知ってるのばっかりだったから、みんなの目が僕に集まる。っていっても前にヨシュ兄と、アンナ、ゴーダンがいるから見えないよ。

 思ってたら、ゴーダンが自分の肩の上に僕を持ち上げた。


 ・・・


 亀?


 あんな亀の魔物、いたっけ?

 僕が頭を傾げると、とりあえずヨシュ兄が亀に向かってナイフを投げた。

 カキン

 甲羅に当たったけど、はじかれたよ。小さいのに随分固そうな音がしたね。

 にしても、変な亀。どこかで見たような気がしなくもない・・・

 赤いからだ。緑の甲羅に、白い模様。

 シルエットはゾウガメっぽいけど・・・

 ナイフをはじいたその亀は、何もなかったようにこっちにやってくる。

 次は、魔法。アンナがファイアーボールを撃ち込んだよ。

 甲羅、は、はじいた。

 もう一発。今度は足下へ。

 あ、ふっとんだ!

 炎にやられた、というより、その圧で押されて、奈落の底へ。

 「まだいるぞ!」

 セイ兄が僕らを飛び越えて前へ出た。

 次の亀のぶっとい首を狙う。


 カプッ


あ、亀が剣を口で留めた。


 あの、「カブッ」感、まさかのあいつ?

 そう思ったらそうとしか見えない。

 ちょっぴりかわいいと思えるそのシルエット。

 セイ兄が噛まれた剣をブンブン振り回してるよ。あ、口を離した。後続の亀の所に飛んでって、もろとも奈落へ落ちたよ。


 しかし、まさかのRPGを離れたチョイスとはね。

 どっかに土管はないかな?

 僕は目を凝らす。

 そう、あれは土管を舞台にしたアクションゲームの人気キャラそっくりなんだ。ひいじいさん、ジャンルも無視なんだね。


 「まだまだ来るよ!」

 アンナが叫ぶ。

 うじゃうじゃ来たよ。てことは、あれやる?

 僕には無理だけど。

 「誰か飛び上がって亀の甲羅を踏んでみて。」

 チラッと僕を見ると、セイ兄が飛んだ。うまくジャンプして甲羅に乗る。

 亀の動きが止まったよ。計算通り。

 「セイ兄、すぐに降りて、その亀をやってくる亀の列に向かって蹴ってみて。スライドさせるようにね!」

 セイ兄。亀の大群に向かってキック!

 思った通り、ボウリングの球よろしく、やってくる亀軍団をはじき飛ばし、ほぼ奈落の底へ。

 蹴った亀、勢いのまま、対岸の壁にぶつかったよ。勢いはまだまだ続く。壁沿いに左へ進んで・・・

 ?消えた?

 壁の中に消えたよ!

 これ、ダンジョン仕様の当たり前なのか、それともゲーム仕様の隠し通路か?

 僕らはダッシュして、その壁の所へ。

 消えたのこの辺だよね。

 僕らは壁をチェックした。


 あ!

 見た目は周囲と同じなのに、手が通るよ。

 50センチ四方ぐらいの小さなトンネルが、あるみたい。うん、入れるのは僕ぐらい?無理すればママもいけるかな?でもハイハイ得意な僕が行くよ。

 みんな心配そうな顔してるけど、なんだか大丈夫な気がするんだ。

 なんとか説得して、僕は単身ハイハイでそのトンネルに入ったよ。


 視界に困らないぐらいの明かりがなぜかある。

 きれいな真四角の通路がちょっとだけ続いた。行き止まり?壁が見えたよ。

 おっと危ない。

 壁に注意してたら、行き止まりに見えた壁の手前で廊下は右に曲がっていて、壁の手前に、30センチぐらいの溝があった。亀さん、ここに落ちたのかな?

 僕はギリギリで溝に気づきセーフ。右側に曲がってすぐに明かりが見えた。

 曲がって正面には何か部屋がある。さっきまでの洞窟内と同じくらい明るい部屋。

 僕は、慎重にその部屋に向かったよ。

 部屋に入ると2メートルぐらいの立方体のような部屋だった。

 中央に2段の階段があって、その上に箱状の台がある。

 見上げると、その台の上には丸い何かが鎮座していて、うしろにキャンドルスタンド。キャンドルスタンドは3本のろうそくが立てられるようになっていて、そのすべてに火のついたろうそくが灯っている。

 こんなところで火なんて、酸素大丈夫?それよりも、誰がつけたんだろう?

 頭をひねりながらも、なんとか台によじ登る。


 あった!


 台には、小さな座布団みたいなのがおいてあって、その上に丸いあの石。

 1個目、やっとゲットしたよ。

 僕は大事にそれを抱え、台から飛び降りると、また来た道をハイハイでみんなの下へ。

 やっとの成果にみんな大騒ぎ。僕だけずるい、という声もあったけど、適材適所。いいチームでしょ?



 さんざん騒いだ後、僕らは壁の扉を開けた。

 そこはすぐに、階段になってて、下の階へ。


 今度は何が出るのかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る