第38話 1歳半編③

そして3ヶ月目。

 ゴーダンがまたそろそろお出かけかな?と思ってたけど、違いました。

 全員で出発です。

 僕とママが来た道とは違い、南東へ向かうと、街道に出る道がありました。普通はこっちを使うんだって。ぐるっと回ってるから3日間で森を抜け街道に出ると、半日かけてトレネーの町に入れます。

 ゴーダンだけだと半分の時間で行けるらしいけど、今回はママの足と体力に合わせたんだって。僕?僕が歩くと日が暮れる!とか、言われて、ずっとおっさんの腕の上。いつかおっさんより早くなってみせる、て、誓いました、グスン。


 今回、全員で来たのはもうすぐ、ママが成人するから。成人すると、町に入るチェックが色々面倒になるんだって。ゴーダンとアンは、冒険者として有名人。ギルドカードも持ってるから簡単に町に入れるんだ。ラッセイは元々、ここの兵士としてずっと住んでたから市民登録している。問題のママと僕は、未成年で、保護者がゴーダンたちということで、ついでに入れてもらえる。だから、未成年のうちにママの証明書を手に入れたかった、てことのようだ。


 町に入ると、冒険者ギルドにやってきました!

 あるんだよね。冒険者ギルド。

 思ったよりデカいです。

 受付に大きなロビー。奥には一段上がって、飲み屋?どっちかっていうと、レトロな準喫茶風のスペース。

 ロビーの奥には階段。

 下の方は、冒険者向けの宿屋や会議室があって、上に行くほど、高級になる。

 最上階は、スタッフ用のスペース。ギルマスとか、偉い人のワークスペース兼居住スペースがあるそうです。

 なんとここ、地上5F建て。しかも地下あり。地下は内緒スペースがあるという都市伝説も。内緒スペースて何?まぁ、牢屋があることは間違いなさそうです。怖っ。


とまあ、やってきました冒険者ギルド!ですが、目的は、ママの見習い冒険者登録。そしてなんと僕も見習い冒険者の登録をするんだって。

 見習いは、未成年で、力のある冒険者の下でお勉強中ですという登録なので、小さな子も多いらしい。さすがに僕は小さ過ぎ、と、みなさん驚いてました。

 見習いは、そのボスも併記されるので、こいつに手を出したらボスが承知せぇへんでー、という証明書でもあるんだって。有力者の見習いであるというのは、それだけ安全になる。また見習いのカードを冒険者のカードに変えるのは簡単。見習い時のデータも記録されるからランクが上から始められる。その分、やらかしも記録されるし、何かあれば全責任はボスにかかる。

 ボスの責任は、そんな感じで重大だ。教育する義務と、そして権利がある。この権利が厄介。見習いの扱いは、ボスに完全に委ねられる。

 何が厄介かって?

 悪い奴は、見習いにして、無料の労働力にする、なんてこともまかり通る。未成年の奴隷はちょっと・・・と、敬遠される抜け道になってるんだ。冒険者ギルドだけじゃなく、商人ギルドも鍛冶師ギルドも、よろずやギルドにだって同じような見習い制度があって、どこも、未成年限定とはいえ、無料の労働力を得る手段、でもある。


 あまりに酷い場合、ギルドからの指導が入ることもあるけど、「うちの教育方針」で大概のことはまかり通る、両刃の剣な制度でもあるということなわけです。


 まあ僕らの場合は、信頼関係があるから問題ない。問題、ないよね?ゴーダンの荒さがちょっと不安な僕・・・



 とはいえ、そんなこんなで、ママはアンおばさんの、僕はゴーダンのおっさんの見習いとなることになった。

 ついでにラッセイも、冒険者登録をする。すでに、ミランダさんとヨシュアさんは、冒険者登録済みで、ランクも急上昇してるらしい。

 二人と合流したら、全員でパーティを組む予定。見習いもパーティのメンバーとして登録されるんだ。

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