第19話 1歳編②

 ご主人様のもとには、たくさんの人が訪ねてくる。時折、僕とママは、そんな人たちの前に立たされる。といっても僕はママに抱かれているから、実際に立たされるているのはママだけだけどね。


 僕らを応接室に呼び寄せたご主人様はいつでも上機嫌&自慢げだ。

 「どうですこの子たち。すばらしいでしょう。」

 「さすがミサリタノボア様。これだけの逸品、そう手に入れることはできますまいに。」

 「本当に偶然の産物ですがね。」

 「いやいや、貴殿の日頃の行いに感服した神々からの褒美でしょう。」

 「ハッハッハ、そうだと嬉しい限りですよ。」


 そんな微妙な会話をじっと聞く僕たち。

 時折、譲ってくれ、だの、魔法を使わせろ、だの、注文をする人も現れる。

 誰も僕たちを一人の人間として認識してないみたいだけど、本当に美術品に見えているのだろうか?

 そんな中、ママには月光の雫、僕は宵闇の至宝、なんて呼び名がつき、貴族の間で噂されるようになっているようだ。噂の宝玉を一目見ようと、さらに訪問者は増加の一方。連日、僕らは、好奇の目にさらされるために、応接室に呼ばれる。

 こんな日々の中、僕は初めて、本当のこの世界の魔法を目撃したんだ。

 それは、そう、僕がこの世に生を受けて、やっと1年が過ぎた日のことだった・・・

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