第8話 生後半年編②
そんなわけで、ママは5の日になるとちょっぴりブルーになる。もちろん毎回5の日に新しい女の子がいるわけではなく、僕が見たのはこれで2回目。なんでこんなに詳しく分かるかといえば、例の口上のオバサンが嬉々として演説してることに加えて、アンに聞いたから。
そうです。えっへん。僕のテレパシーが上達して、アンとも会話ができるようになりました。前からできるんじゃないかとは思ってたんだけどね、信用ならない人と心を合わせるとなるとこっちも相当キツいんだよ。タールに足を突っ込みたくないでしょ?そんな感じでビビってたともいう。
初めて『アン』て呼びかけた時は、アンも流石にびっくりしてたよ。でも、やっぱりアンは謎だ。こんな環境にいて計算できるのでおかしいな、と、思ったけど、どうやら文字も読めるらしい。誰も気にしてないし、気づいてもないみたいだけど、あっち側の人間が持ってるパピルスみたいな木の紙を、いつも後ろの方で覗いてるんだ。あ、卵とか牛乳の回収の時、パピルス見てチェックしながら、持ってくんだよ。たまに顔をしかめてるから、あいつら、ごまかしてるんだろうな、と、僕は思ってる。
で、優秀なるアンおばさん。声をかけたときの最初のびっくりしたっていう感情以外はとっても理知的。心を読ませないようにパンパンてドアを閉めた感じ。なんでそんなことできるの?あれってテレパシー的なものの防御方法を知ってるってことだと思う。うん、謎だ。
謎だけど、嫌な感じはしないし、ママに愛情もある、と思う。僕らに悪いことはしないだろう、ていうのは、直感かな?なんか隠してるのは間違いないけど、秘密は女を美しくするのさ、と、誰かが言っていた、はず・・・
いずれにせよ、分からないことや相談はアンにすることにした。一応僕のことはダーだと気づいていない、はず。気づいていないと良いなぁ。
僕は、ミミの加護をしている「知の精霊様」として、よくわからん人間の行動や世界について質問する、という体で、アンとコミュニケーションを取っている。おかげで、この世界のことがだいぶ分かったってところかな。
ミミことママや、この家畜小屋の住人の世界は狭い。家畜小屋と畑、遠出しても村の市場。家畜小屋は実はでっかいお屋敷の庭の片隅にあるらしい。このお屋敷の持ち主は、商人、だそうだ。なんでこんな田舎に商人?と思ったけど、馬車で半日のところに、それなりの町がありそちらに店を構えているらしい。町の喧噪を避け、ゆったり優雅に過ごすためにこの屋敷を建てたのが先代だそうだ。
この先代、というのがちょっとひっかかる。アンには思うところがあるような・・・・先代から今の主人に代わったのは「ミミの生まれた頃さね。」とは、アンの言。先代と今の主人は肉親関係にない、と言ったアンの顔は、ちょっと、いや、かなり怖かった。
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