第2話 生後数日編②
僕は、柔らかい布にくるまれて、草のベッドに寝ていた。なぁんて、ちょっと気取って言ってみる。
なんのことはない。実際はひどいにおいのするくたくたになった布、とさえ言い難いぼろきれに包まれて、その辺りにぼうぼうと生えている、大人の膝丈ぐらいの草をついさっき引いてきて土の上にまとめた、その上に僕は寝かされているんだ。
雲一つないきらめく太陽。気温は暑くも寒くもない。たぶん春?ここに四季があれば、だが。
一応、日陰ではある。時折やってくるエライ人が使うように造られた、柱に屋根だけ乗った建物っぽいものの下だ。
草の匂い、土の匂い、さわやかな風。素晴らしい自然に囲まれて、僕はうたた寝をする。・・・・空しい・・・こんなこと考えなきゃよかった。ため息をつく、つもりが、なんで泣き声なんだよぉ。僕の口からは残念な泣き声が溢れる。
えーん、えーん、ビーッ・・・
突如、泣き声の大合唱が!
え?僕のせい?
そう。僕の周りには、僕ほどじゃないけど小さな赤ちゃんが数名いるようだ。
ははは、そうだよ。僕は赤ちゃんなんだ。笑える~・・・いや、笑えねぇよ!
どうしてこうなった?
頭をひねってみる。これって異世界転生ってやつか?
よく言うじゃない?気がつくとすっげー美男美女がいて、きっと新しいパパとママだ!とか、見回してみると部屋の様子は○○で、とか・・・あれ嘘だぜ。嘘じゃなければ、それだけでチートってやつだ。
なんでかって?そりゃ、今まさに体験してるもん。
そもそも、首が据わってないから動かせない。あと、この身体がダメダメのせいか、これが普通か知らんけど、視界がさ、白いんだよ。もやもやしてる?霧とか雲の中にいる感じ。相当近くても、ボンヤリ影な感じ。その中で不思議とさ、一人だけ普通に、いや、スポットライト当たってるみたいに見えるんだ。これが、たぶんママ、なんだろうけど・・・そこが問題だ。
何が問題かって?いや、どう見ても小学生じゃん!細っこくて小さい、あどけない女の子だよ。
僕が泣くとさ、慌てて走ってくるんだ。白い霧の中から浮かび上がってくる小さな女の子。その顔を見るとむちゃくちゃ安心する。
身体に引っ張られてる?うん、それもあるよな。
でも、考えてもみてみ。視界が全部白いんだ。しかもさ、音もはっきりと聞こえてるわけじゃない。ワーン、とかバリバリっとか、なんかしゃべってる声も、水の中で聞いてるみたいに聞こえる。そんな中で、声もそうだ。ママの声だけは、きちんと音として聞こえる。うん、音として、さ。
言葉?分かるわけないじゃん。翻訳機能、なんてチートなもん、僕は持ってないんだ。外国語だよ、完全に。
あ、話がそれた。
なんで、ママが来ると安心するかって?
そりゃそうでしょ。
ママだけが、はっきりと顔が分かる。はっきりと声が分かる。ちなみに匂いだってママだけが良い匂い。おいしそうな匂いをさせて走ってくるんだ。ヘンな勘違いをするなよ。おいしそうってのは、ミルクの匂いだよ。だってまだ、僕はミルクしか飲めないんだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます