第55話
《和泉》
最近ふと、日常の中に、寂しさと新鮮な気持ちを、見つけていた。
直ちゃんといるときは特に、逸る気持ちを感じていた。
直ちゃんと歩く帰り道。
直ちゃんはいつも一駅乗り過ごしてまで、家まで送り届けてくる。
「そういえば、誕生日プレゼント、渡したよ」
「そっか、ありがとう」
家が近づく帰り道で、直ちゃんは思い出したように言った。当日ではなかったことも、一緒に教えてくれた。カノジョより先に渡すのは悪いからと、見送ったそうだ。
「本当に、良かったの?」
質問の意味が分からず、少し考える。それでも、やっぱり、なにを聞きたいのか分からない。
「なんのこと?」
「プレゼント、俺と一緒で。俺が渡して」
途切れ途切れの言葉に、苦笑がこぼれる。
「お願いしたの、私だよ?」
胸がチクリと痛む。その痛みに、今は深い感嘆と笑みがこぼれる。
返事のないことに気づいたとき、そっと手になにかが触れた。見上げると、直ちゃんが苦しそうな笑顔で、私を見ていた。
これで良いんだと、言い聞かせた言葉が、優しい温もりに包まれる。
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