第45話


《直己》



 放課後。待ってくれていた和泉と、帰る。これで10回目。

 今日は少し遠回りして帰ろうと、誘った。和泉は前より早いタイミングで、受け入れてくれた。嬉しかったのは、ここだけの話。

 はじめてのデートで、通った道。和泉が足を止めた、あの雑貨店。あの、キャップ。要が好きな赤色の、渋いキャップ。

 和泉はまた足を止めて、まだディスプレイされたままの、そのキャップを見ていた。


「入る?」

「ううん、良いよ」


 苦しそうな笑顔で、和泉は首を横に振る。

 要の誕生日、近いよ。プレゼント、渡さないの? 


 なんて、まだ聞けない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る