第44話


《要》


 食事は、なんでも良いってわけじゃない。

 唐揚げが好きだ。ハンバーグも、オムライスも好き。グリンピースは苦手。菓子パンも苦手、惣菜パンはもはや常備食。

 母のロールキャベツ。和泉のお母さんの筑前煮、それで、たまに和泉が作るビーフシチュー。

 手作り料理の方が好きだけど、だからって母にわがままを言って、忙しい中、お弁当をつくってなんて言う気はない。

 だからこそ、お昼は、誰と食べるかを重視する。

 友達とわいわい言いながら、食べるのが好き。それでやっぱり、お弁当もあればなお嬉しい。跳び跳ねるくらい、嬉しい。

 でも、ワガママは言わない。

 友達と食べる惣菜パンも、好物だから。




 食事を急いで終わらせて、廊下で待つカノジョの元へ駆けつけた。後ろから冷やかしの口笛が聞こえる。

 早々にその場から離れて、外廊下に出た。


「え? お弁当?」

「はい」


 横にならんで、カノジョは体ごと僕の方を向いている。


「お母さん、看護師さんで忙しいって聞きました」


 風景からカノジョへと視線を移すと、カノジョの背の低さに驚いた。一瞬、姿を見失ったかと思った。


「だから、明日から私作ります。一緒に食べましょ、先輩」


 カノジョはそんな俺に、跳ねるような声音で満面の笑顔を向ける。

 俺はただ、苦笑した。

 この画角を可愛いと思う気持ちと、誘いに戸惑っている自分がいた。


「大変じゃない?」

「大丈夫です。先輩の為ならドンと来いですよ!」


 今度は胸を張るカノジョに、俺は少しひいていた。


「そう、なんだ」

「そうなんです」


 結局断る正当な理由もなくて、俺はカノジョに甘えることになった。

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