第41話
《要》
デートは嫌いじゃない。カノジョの私服を見るのも、長い時間、同じ経験を共有することも好きだ。特別感想は言えなくても、顔に出てなかったとしても、俺は楽しんでいる。
特に行きたいところもないけれど。
特に着て欲しい服もないけれど。
カノジョが楽しいなら、カノジョがそれで良いと言うのなら、俺はそれで満足だし、不足はないと思ってる。
もちろん、カレシとして外せないことはするつもりだし、要求されるなら答える。
カノジョだから、カレシだから。
当然だし、当たり前だし、そうでなきゃいけないと思うから。
新しいカノジョとの、はじめてのデート。始めての待ち合わせ。
駅前のロータリーに、カノジョは居た。
はじめてだ。カノジョの方が先に来てるなんて。
「早いね」
「はい! 先輩に早く会いたかったので」
それって、僕が早く来なきゃ意味なくない? なんてつまらない疑問は、笑顔ではらった。
「行きたいところがあるんだっけ?」
「はい! 流行りのデートスポットなんですよ! 最近できたお店で」
カノジョの話に相づちを打ちながら、笑顔を作る。話がつまらないわけじゃない。別に、興味ないんだよね。俺、楽しければそれで良いからさ。
たどり着いたお店は、店構えも店内も、実にオシャレな作りで、女子が好きそうで、男子が一人で入るには勇気がいるような感じだ。出てきた食事もオシャレで、男子だけじゃ絶対に食べることはないだろう。証拠に、店内にいる男子はどうみても女性連れである。デートスポットといわれるくらいだから、きっとカップルなんだろうな。
カノジョの話に耳を傾けながら、食事を済ませる。少しお腹を休ませてから、レジに向かった。
黒いシンプルなエプロンに帽子を被ったスタッフが、店内から飛んでくる。
カノジョがお財布を出そうとしているのを見つけて、手で抑えた。
「奢るよ」
「良いんですか!?」
「カレシだからね。奢らせて?」
俺の言葉に、カノジョの頬が赤く染まる。そして満面の笑顔を咲かせた。
「ありがとうございます」
あ、聞いたことのない声だ。
カノジョの新たな一面に、俺の頬も自然と緩んだ。
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