第38話


《要》


 女の子を嫌いな男はいない。

 胸の大きさ、ウエストの細さ、足の長さに至るまでのプロポーションにこだわる人。目の大きさ、肌の透明感、鼻の高さなどの顔の造りにうるさい人。マニキュア、服装、髪型などのセンスに口酸っぱい人。たぶん、女でも同じくらい、そういうことにこだわる人はいるんだろうけど。

 俺には、それがない。

 身長なんて低くても高くても。目なんて大きくても小さくても。服装だって、家でジャージ、問題なし。

 かわいいところは人それぞれあるし、綺麗だと思う瞬間は誰にだってある。そこに優劣なんてない。

 好みなんて所詮、話のネタでしかないと俺は思うんだ。




 久しぶりに食卓を一緒にした和泉が、また玄関先まで追いかけてきた。


「どうしたの? 和泉」


 俺は、玄関で靴を履いている最中だった。和泉がうつむくと、余計にその表情が見てとれた。

 この前は切羽詰まっている感じだったけど、今日はなんだか、静かな感じだ。


「今のカノジョ、好き?」


 靴を履き終わって、立ち上がる。癖でかかとを鳴らしてしまった。 


「まあ、付き合ってるからね」


 俺の答えを聞くと、和泉はなにかを噛み締めるように笑って、頷いた。


「そっか。この前は、変なこと言ってごめん。忘れて」


 苦笑する和泉に、俺はただ、「気にしてないよ」とだけ返した。

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