第32話


《要》


 女子はスポーツに興味ない。

 たまにそうじゃない人もいるけど、大抵の人は、ルールを知らない。

 今まで付き合ってきたカノジョも、誰一人バスケのルールを知らなかった。付き合いはじめて、覚えた子もいたけど、バスケが好きになった訳じゃなかった。

 だから部活の話をしてもつまらないだろうし、面白くないと思うんだ。

 それなのに無理矢理、応援をお願いすることは、お門違いだと思う。

 カノジョにはカノジョの時間があって、俺はそれを奪いたいとは一ミリも思わない。




 朝の練習に来て、驚いた。


「おはよう、早いね。部活?」

「違います! 応援に来ました! カノジョなので!」


 体育館の入り口で、カノジョと先輩が話していた。


「おはようございます」

「お、色男。おはよう」


 先輩の嫌味にツッコむ間もなく、先輩は体育館の中に入っていった。

 カノジョと二人になって、改めて挨拶を交わす。カノジョは朝から満面の笑顔だ。


「ただの部活だよ?」

「知ってます」

「無理、しなくて良いよ」

「してませんよ」


 笑顔を崩さずに、いや、一層嬉しそうにカンジョは答える。


「朝イチで先輩の顔見れて、私は幸せです」


 体育館に響いた声に、中から冷やかしの声が聞こえてきた。


「そう、なんだ」

「はい!」


 言葉につまる俺に、カノジョは朗らかな笑顔で答える。二階にいると言うカノジョに、俺は圧されぎみに頷くことしかできなかった。

 階段をかけ上がるカノジョを横目に、俺はチームメイトの元にいく。


「幸せ者」


 挨拶よりも早く、嫌味がとんできた。

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