第31話


《和泉》


 女子に疎まれることを、名誉だという人がいる。

 疎まれるほど美しく、妬まれるほど羨ましいと思われている証拠だと。

 そんなプラス思考になれるほど、私は綺麗でも恵まれてもいない、なにより、私の思いは満たされていない。

 疎まれることも、妬まれることも、ただ心苦しいだけだった。

 全部思い違いなのに。

 全部かっさらわれるのに。

 私の思いはなに一つ、報われてはいないのに。

 誰にも通じない。私の気持ちなんて。

 本当に知って欲しい人にさえ。




 登校してすぐ、下級生に呼び止められた。見知らぬ顔だ。


「私、要先輩と付き合うことになりました!」


 昇降口で叫ぶカノジョに、私は驚いた。

 要が別れたことも、私は知らなかった。


「だから。私のいないところで要先輩に会うのはやめてください」


 その言葉に、私はただショックを受けた。


「私、カノジョなので!」


 なにも返せない私にカノジョは言い放って、満足げに帰っていく。

 微動だにできない、私をおいて。

 周囲にざわつきを、残して。

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