第30話
《直己》
放課後の練習に行くなり、要が修二と宮に囲まれているのを目撃した。
「お前フラれたって!?」
「お前付き合い始めたって!?」
同時に発せられた言葉。
「「は?」」
問いただしている本人たちが、驚いていた。二人は向き合い、目を見開いて静止していた。
「どっちもあってるよ」
要が、じっとりした目で二人を見ながら答えた。二人は、静かに要に顔を向けた。
「お前さ、これはさすがに節操ないんじゃね?」
「フラれてすぐじゃん。なんだ? 嫌がらせか?」
「誰に対してだよ」
「元カノに対してだろ」
要を放って言い合う二人を、要は黙って見ていた。
「なんだ、要、またカノジョ変わったのか?」
「みたいですね」
「アイツも成長しねぇなぁ」
後ろから話しかけてきた先輩に、口だけで応える。三人は体育館の隅で、盛り上がっている。
「つか、その下級生? 新しいカノジョ、嫌なんじゃねぇの?」
「嫌なのに、告白してくるの?」
「お前さ、その下級生のこと、知ってたの?」
少しずつ、三人に近づく。勝手に足が動いたのは、きっと慣れだ。
「すれ違ったことは、あるかな」
「どんな子だよ」
「かわいい子だよ?」
なんの気なしに、要は答える。今度は二人が、じとっとした目で要を見ていた。
「ほんと、モテるやつムカつくわー」
ほんと、ムカつく奴だと、俺も思う。
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