第26話


《要》


 部活動は、俺にとって、特別なことじゃない。

 日常の一貫で、変わりなく続く、楽しい時間だ。

 カノジョの応援で、素晴らしいプレーができるわけじゃないし、カノジョの応援で、パワーがみなぎるなんてこともない。

 俊二が動いて相手を引き連れてくれた方が、ベストなプレーができる。

 最悪、直己のパスがあれば、ゴールはできるんだ。

 それはカノジョの応援なんかより、確かで、必要なものなんだ。




「和泉、応援に来るの?」

「来るよ」


 直己の答えに、俊二と宮が活気づく。


「誘ったの?」

「誘ったよ」


 俺の質問にも、直己は端的に答えた。

 頭に衝撃を感じ振り向くと、俊二に首を絞められた。


「お前! いつも誘ってんじゃん」


 苦しいと俊二の腕を叩くと、すぐに解放された。わざと咳こんでみせる。


「俺、誘ってないよ」

「え? まじ?」

「え? 誘うもんなの?」


 目を見開いた、俊二と見つめ合う。顔が近い。


「俺なら誘う」

「まさか、恥ずかしいのか?」

「いや、要はそんなヤツじゃないだろ」


 俺を放って盛り上がり始める彼らから、離れる。シューズを履く直己の横に立つ。


「恥ずかしかった?」


 顔を覗きこもうと試みるが、当然のように見えなかった。


「俺は、そんなことない」

「ま、今さらだしね。和泉が練習試合に来るなんて」


 靴紐を結ぶ直己の手が、一瞬、止まったように見えた。


「そうだな」

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