第25話
《和泉》
視線は、本当に正直だ。
気づかない内に、好きな人を追ってしまう。
意識しているものじゃないから、私は気づかない。
気づいてほしくない人が気づいて、囁きはじめる。
関係ない人が気づいて、関係のある人に伝えて、伝わって欲しい人には、伝わらない。
指摘もされなければ、どうしたいのか聞いてもくれなくて、面白おかしく噂して、私を諦めるように仕向けてくる。
好きになるのも、嫌いになるのも、私次第なのに。
それを、誘導しようとする。
諦める方へ。
それが、私の正しい選択だと、決めつける。
屋上で、直ちゃんと並んで座った。お昼休みの残りを、はじめて一緒に過ごしている。
「練習試合があるの?」
「そう」
テストが終わって部活が再開すると会う機会が減るからと、教科書を借りに来たときに誘われた。食後で良ければと返したのは、私。
「よかったら、応援に来ない?」
誘われて、動揺する。
「用事でもあった?」
行きたくないわけじゃない。この前久しぶりに行けて、すごく嬉しかった。ただ同時に、苦しくなった。私は、場違いだったから。
「ない、よ」
けど今は違うのかと思うと、余計に胸が締め付けられた。素直に、行きたいと、言えない。
「なにかマズイ?」
不安そうな直ちゃんの顔に、今度は息ができなくなりそうだった。
「ううん、大丈夫」
どうにか笑顔を繕って、答える。
直ちゃんが、苦笑した。
「行くね」
さらに言葉を重ねると、声が震えた。寒さのせいだよと口にして、自分に言い聞かせた。
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