第23話


《要》


 告白はしたことがない。できないとか、やらないとかじゃなくて、好きだって告白しようって思ったことがないから。

 だから、そう思う瞬間の素晴らしさを、俺は言葉でしか知らない。

 別に運命の相手を待ってるわけでも、探しているわけでもないし、恋愛に必死ってわけでもない。

 ただ素晴らしいと思うことを、奇跡だと思うことを、焦がれる気持ちはどこかにある。

 だから、それを知っている人を目の辺りにして、拒否はできない。

 何より、やっぱり、凄いと思うんだ。




 いつもみたいに廊下で友達と話していると、また誰かとぶつかった。前にも同じところに衝撃を感じたことがある。そう思って振り返ると、やっぱり、この前の下級生だった。


「要先輩! 今、カノジョいますか!?」


 彼女が、叫びまじりに聞いてくる。

 その後ろに、なぜかカノジョが険しい顔で立っていた。


「いるよ」


 と答えると、


「失礼しました!」


 走って去っていく下級生と入れ替わるように、カノジョがこっちに来た。

 隣に立って、少し口を尖らせている。


「何あれ」

「さあ?」


 首を傾げて見せたが、カノジョは下級生を睨んでばかりで、こちらを見てはいなかった。

 カノジョの腕に、教科書や筆記用具が抱えられているのに気づく。


「移動教室?」

「そうなの。要くんは?」

「数学」

「頑張ってね」


 その言葉を残して、カノジョは友達の元へ行った。

 頑張れって、ただの授業なんだけど。

 教室から友達に呼ばれて、俺は教室に戻った。

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