第17話
《要》
バスケをはじめたのは、両親の勧めだった。
一人でいる時間を少しでも減らすためと、友達を一人でも多く作るためだった。
おかげで時間をもて余すことはなくなったし、寂しいと感じることもなかった。
それは俊二のおかげで、宮のおかげで、源太のおかげで、直己のおかげで、和泉のおかげだ。
それだけで俺は恵まれてると思ったし、幸せだった。
カノジョができても、それは何一つ変わらない。
いくつになっても、それは何一つ変わらない。
両親の生活リズムに変化がないように、
俺はみんなに感謝しながら、
みんなと過ごしていくんだって、思うんだ。
「あれ? 今日は遅いじゃん」
「テスト勉強、してたから」
朝。久しぶりに和泉と一緒になった。
「昨日むっちゃん遊びに来てなかった?」
「勉強だよ」
「学校違うじゃん」
「学年は一緒だから。まあ、ほとんど教えてもらってるけど」
「役得だよね。今度、俺、混ぜて欲しいよ」
普段なら数秒で通りすぎる景色を、今日は眺めがら歩く。
「テスト期間だからないんだっけ? 朝練」
「そう。だから贅沢に二度寝した」
「遅刻しなくて良かったじゃん」
「起こされたんだけどね」
目覚ましを二度止めて、すっごく不機嫌な母親に、蹴り起こされた。きっと背中に足跡が残っているはずだ。それくらい痛かった。
「お母さん、夜勤だったの?」
「そ。朝帰ってきたみたい」
とりとめのない会話に、空を見上げる。
「久しぶりじゃない? 一緒に行くの」
「そ、だね」
バス停まで、あと数分。さっきまでのけたたましさが嘘のように、心が落ち着いていた。
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