第15話
《直己》
「そういや、さっき、告白前の男子見つけたぞ」
「まじか。どこで?」
「体育館の裏。一人ですげー緊張してたから、あれは絶対、告白だぜ」
更衣室で着替えながら、いつもみたいに俊二と宮が楽しげに話していた。
「まだ居たんだな、体育館の裏で告白するやつ」
俺は二人の会話に先輩が加わったのを背中で聞きながら、更衣室を出た。「待てよ」なんて声も聞こえてきたが、「体育館でね」とだけ返しておく。
プレハブの部室から体育館へ向かう途中で、和泉を見かけて呼び止める。
「和泉」
「直ちゃん。今から部活?」
バスケをはじめて要と仲良くなって、和泉とも仲良くなった。最近は普通に、それなりに話す程度で、通常の、高校生の、男女の関係だ。
「どこ行くの?」
「体育館」
「要に用?」
和泉は苦笑して、首を横に振った。
「違うよ」
ふいに、さっき聞いた会話がよみがえる。
「体育館の、裏?」
和泉は視線を反らしたあと、頷く代わりに微笑んだ。
なんでこんなに胸がざわつくんだろう。最近、和泉が悪く言われていたことだけが、頭を満たしていた。
それがなぜかも含めて、全部、分かっている。だから、自覚したその数日後に、諦めることにした。なのに。
「俺でも良いの?」
和泉は首を傾げるだけだった。
「付き合おうって言ったら、俺でもいいの?」
和泉は目を見開いて、ただ驚いていた。
「和泉。俺と付き合おう」
こぼれでた言葉に、心が晴れていくのを感じる。
酷く言われる君を、ただ見ているだけなんて嫌なんだ。
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