第13話


《和泉》


  女は怖い。

 すぐに他人の好きという気持ちに気づくし、すぐに正当性を説いてくる。

 好きなら告白する、好きじゃないなら好きじゃないって態度で伝える。

 どちらかしか、許されない。

 中途半端な態度を怒り、悩ませてくれない。

 好きだって気持ちも、愛してるって気持ちも、

 単純で、簡単なものじゃないって知ってるはずなのに。

 ただ、好きでいることを、彼女たちは許してくれない。




「なんであの子、人のカレシと仲良くできるの? 鈍感にもほどがあるよね」

「いくら幼馴染みだからって、彼カノジョに失礼だよね」

「気を使えっての」


 休み明けの教室で、私を見つけて女子たちが言う。その輪の中心には、要のカノジョが居た。

 名指しされなくても分かる。私のことを、言っている。

 私は奥歯を噛み締めて、席に急いだ。


「どうかしたの? 和泉ちゃん」


 隣の席の友達が、顔を覗き込んでくる。

 私は顔を髪でかくして、「なんでもない」と絞りだした。

 女子がみんな、彼女みたいに、鈍感でいてくれれば良いのに。

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