第7話


《和泉》


 好きは体から溢れてるんだって、誰かが言った。

 だから、私が要を好きなことをみんな知ってて、幼馴染みなんて体のいい間柄に甘えて、そばにいる。

 なんて卑怯なヤツなんだって、思われてる。

 さっさと告白して、フラれて。

 それで。

 それで、離れていけって、思われてる。

 好きだって気持ちが、そんな簡単に諦めることのできるものじゃなくて。

 好きだって気持ちが、そんな単純に終わらせられるものじゃなくて。

 両想いになりたいって言葉が、一生のお願いになるんだって。

 みんな、分かってるのに。


 みんなが、私の失恋を願ってる。




「へー! 今度は同じクラスなんだ、カノジョ」


 楽しそうにむつみは言った。同じ中学出身で中学校で唯一偏差値の高い高校へ入学を決めた彼女は、私のたった一人の大切な友人だ。


「はじめてじゃない? 今まで居なかったよね? あんたを懸念して」

「それは、知らないけど」


 お互いの教科書を広げて恋バナをするのは、自宅学習のお決まりコースだ。


「ほら、そんな顔する。見飽きたなー。なんで告白しないの?」


 一体どんな顔をしているというのだろうか。


「しないよ、だって」

「要くんが人を好きにならないから?」


 少しの沈黙も待てないようで、むつみはまるで私の言葉を代弁するように言った。


「付き合って好きにさせれば良いじゃない」

「私は、そんな付き合い方したくないの」

「そんなこと言ってるうちに、誰かにとられるよ? あ、とられてるか」


 むつみは私から視線を反らすように、窓の外を見やる。


「てかさ、要くんがあんたを好きになってくれるか分かんないじゃん。あんたら、どんだけ長い付き合いなのよ」


 むつみの言葉が、どういう意味なのか分からない。要が私を好きになる可能性があるといっているのか、ないと言っているのか。ただ単純な励ましじゃないことだけは分かった。

 私を振り返って、むつみはため息をこぼした。


「私、少なくとも七年はそんなあんたに付き合ってるんだから、これくらい言っても許されるでしょ」

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