▲▲つ11っ!ふくのさいずがおおきいよぉ~!

 「!」

 背中を向けたままでいることとは……として、気付くことは。

 もしかしたら、恥ずかしいのかも?

 「……あ、ま、マフィン?その、寄っていい?だ、大丈夫だよ。マフィンに酷いことはしないから……。」

 そうなると俺は、安心させるために一声掛けようと。

 「……ひっ!い、いやぁ……!」

 「……ぬぅ。」

 が、それは実を結ばない。 

 マフィンは背中を向けたままで、小さく悲鳴を上げるばかり。

 そうなると、困ったことになったと俺は、軽く呻いて、頭を掻いた。

 「……もぅ~。マフィンちゃんも受け入れなさい。将来はあなたのお婿さんになりそうな人なんだから。あ!もちろんお姉ちゃんも!」

 「?!」

 「?!」

 そんな俺の背中を押すように、言葉で押してくる。

 クーンはいや、どこかからかい気味かも。

 なお、聞いたこちらは、緊張に身体が固まってしまった。

 何を言い出すかと思えば、とてつもなく恥ずかしいことで。

 それはまるで、将来を誓いあったとか、うにょにょにょにょ……。

 ……言葉に困る。

 「そーそー!だから一緒に入ろっ!詰めないと、あたしも入れないよっ!」 

 「?!」

 「?!わぁ?!」

 そうこうしていたら、今度は物理的に押されて。

 それこそ、声からしてアビーだ。 

 弾んでいる様子から、アビーには悪意はない。 

 いつものような笑顔たっぷりな様子に違いない。 

 その、楽しそうとは裏腹に、やられた俺は余計にマフィンに接近してしまい。 

 そうなると俺まで、小さいながら、悲鳴を上げた。

 他、マフィンは?

 「~~~~~ぁあぁぁぁ?!」

 「!!」

 限界に達するか。 

 マフィンはとてつもな悲鳴を上げた。

 耳を塞ぎたくもなる。

 その悲鳴たるや、不気味にもこの浴室中に響き渡っていた。


 「……。」 

 その混浴もやがては終る。 

 俺は、軽くお湯にあたってしまったか、脱衣所で一人、項垂れていた。

 身体のほてり、それは長く入っていたこともあるだろうが。

 それ以上に、混浴の衝撃も。

 ……まあ、普通に入っていただけなんだけども。 

 アビーとはまあ、いいけれど、今回は刺激の強い人がいたし。

 その余波にも当てられてしまったようだ。 

 「……はぁぁ。」 

 拭いたく、俺は脱衣所で思いっきり溜息を吐いた。

  「……。」

 それにより、気持ちを落ち着かせて。顔を上げ、見渡して。

 「!」

 また、その際にロッカーを見たなら。

 自分のバックパックの隣に、綺麗に整えられた服が側に置いてあることに気付く。

 何だかんだ、そう、臭いを嗅ぎまくって。

 ハァハァする……してないよね?いや、そんなことはいいや。

 いつの間にか、汗だくであった服は、替えられていたのだ。

 仕事は、ちゃんとしていたみたい。

 「!……。」 

 立ち上がり、ロッカーに向かい、手触りを確認すれば。 

 やはり、だ。

 すっかりクリーニングされた、パリパリの服。

 あの時、俺に寄り添う前に、洗濯した物に交換してくれたらしい。 

 ああ、その……。

 なぜ交換できるかって言うと、よくクリーニングを頼んでいために。

 入れ替わりとしての服を、マフィンに頼んで作ってもらっていたから。 

 「……はぁぁ……。」

 他方、その仕事の良さ、思ったのだが、残念を感じてまた溜息をつく。 

 その残念、クーンのことだが。

 あんな性質じゃなきゃ、もっといいのに。それなら……。

 「……それなら、もしかしたら……ええと。」

 口にしつつ、思考を回すなら。

 もし、あんな感じじゃなきゃ。

 クーンはきっと、いいお嫁さんになりそうな……。

 だって、洗濯だけじゃなく、料理も上手みたいだし。 

 そう、あんな感じじゃなきゃ、とってもいい人なのだ。

 その残念さに、勿体ないなとも思ってしょうがない。 

 「?!……ぞっ?!」

 などと思考をそう巡らせていたなら、悪寒がして、身震いしてしまう。

 何だか、舌なめずりをして、俺を見つめている、そんな。

 誰だ? 

 ……って、分かるよ。

 クーン……。

 「……。」

 だとして、俺は迂闊だったかもと思う。

 何せ、クーンはあんな性質、だけで片付けるわけにもいかない。

 地獄耳を越えるような、とんでも感覚を持っているのだ。

 思考を、読める……のかも?

 だとして、この、壁を隔てた、向こうの、女子更衣室からも覗けるのかも?

 結果、余計に身震いが止まらなくなった。

 「……ぬぅ。」 

 湯冷めもあるかも。

 このままだと、俺は風邪をひきかねないね。 

 嫌で、俺は素早く着て、整える。

 バックパックを背負えば、すっかりいつもの自分である。

 「ん?」

 なお、バックパックの方からも、良い香りが。 

 古臭い感じをなくすような、爽快の。

 「……。」 

 もしかしたら、クーンがしてくれたのかも。  

 そう思うと、素晴らしさについ、笑みが浮かぶが。 

 「……何でだろうなぁ……。」 

 ……続けて、残念だと肩を落とす。  

 やっぱり、こっそりとこんなことできるのに、何でああなの……。

 そう、クーンのあんな性格に。 

 折角の温もり。

 心地よさがあるのに、残念に肩を落として。

 その肩に、いつものバックパックを背負わせて更衣室を出た。

 「!」

 もう、女性陣は出ていたか。

 「はいっ!大和ちゃん!」

 更衣室から出たなら、視線を落としていた俺を遮るように影ができると。

 アビーが明るい声で言ってきて、何か差し出してきた。

 視線を上げると、それは瓶詰の牛乳のよう。

 おまけとして、差し出す側の表情は、やはりいつもの、アビーらしい笑顔で。

 「……ふぅ。……だね。」

 らしいや。 

 この場面も、その顔も。俺は、落とした肩を戻して。

 そっと笑みを浮かべ、差し出された牛乳を受け取った。

 「うんうん!湯上りは、これっ!」

 アビーは、俺がそのような顔をするものだからと。

 アビーは笑顔にさらに、これだねと頷いてきた。 

 「!」

 その際に、アビーの背の向こうが見えて。

 向こうでは、他の2人が椅子に座っていて、のんびり……。

 いや、1人だけはのんびりしているが。

 もう1人は、俺のように項垂れてもいた。 

 もちろん、クーンとマフィンだが。 

 クーンが項垂れるわけはない。 

 マフィンであり。

 「?」

 また、違和感もある。

 いつものマフィンの服装じゃなく、もっと別の。

 派手さはないが、地味でもない、どこか独特の、長袖でゆったりとした物だ。

 「!クーンっぽい?」 

 そうだ。

 口を突いて出たが、クーンっぽい服装だ。 

 元々クーンもマフィンも、長い髪であり。 

 両方とも似合わないわけじゃない……が。マフィンらしくない服装であり。 

 「……?」

 それはそうと、疑問も。 

 何でだろう?なぜ、マフィンがクーンと似たような服装なのだ?

 また、なぜ項垂れている?疑問が浮かびに浮かび。

 そも、服装も、マフィンなら自分で用意していそうなもので。

 項垂れるようなこと、あったか? 

 「!あ、大和ちゃんもしかして!」

 「!」

 それを、アビーは察してか、俺が受け取ったにもかかわらず。

 一切口にしないし、疑問に首を傾げているのに対して、声を上げてきた。

 「マフィンちゃんのこと、だね。」

 「!」

 言うなら、俺が気になったこと。

 マフィンのこと、この時は鋭いんだ。 

 「……と、そうだね。で、どうしてマフィンはクーンの服を?」

 それが呼び水になり、俺は口にした。 

 そう、なぜにマフィンが着ているのか。

 「!あ~それねっ!ええとね、マフィンちゃん、予備の服とか、持っていなかったみたいなの!……で、クーンが持ってきた服を着てるのっ。」 

 「!……そっか。」 

 答えとしてアビーが言うことは。

 マフィンはそもそも、予備の服を持っていないから仕方なくといった感じで。 

 納得もする。 

 マフィンはそも、クーンのお店を使わなかったりしているから。

 予備の服を用意されていない、それがために、ここにてこうなるか。  

 アビーのたどたどしい言葉ながら、気付く。

 「……?」

 だが、疑問もまた上がる。 

 だとしても、項垂れるほどだろうか?

 そう、予備がなかったから仕方なくで着て。

 あんな、ショックを受けたような風にはなるまい。 

 そう思い、首を傾げた。  

 「?あれあれ?大和ちゃんどうしたの?」

 「……ええと、あんな、軽くショックを受けるレベル?」

 「?う~ん。ど~だろ?」

 「……。」  

 アビーはまた、気付いて聞く。 

 俺が口にするのは、あれほどのショックを受けるだろうかとのことで。

 アビーは聞いてくれるものの、有効な答えは出ない。

 アビーまでも首を傾げてしまう。

 「……聞いてみるか。」

 「だねっ!」 

 そこは、マフィンとクーンに聞こう。

 翻って俺は、そう提案した。

 アビーも元気に頷いて。それならと俺は、その2人に歩み寄る。

 「ええと……。」 

 声を掛ける前に、一旦思考し、慰めの言葉でも紡ごうと。

 「……。」

 情けないや、上手く言葉が浮かばない。

 ……世界を救ったりしたのに、ね……。

 「……その、マフィン、どうしたの?あ、その、難しいなら聞かないことにするけれどもね。よければ、だけど。その、……ごめん。」

 致し方なく、また、もし傷を抉るようなら悪く。

 前置きに複雑な様子で俺はそう聞く。

 「……。」 

 傷付けてしまうようなら。とてつもなく悪く感じて。 

 傷を抉るようなら、ただでさえ疲労しているのに、余計に酷い目に思えて。

 「……うぅ……。」 

 「!」 

 なお、マフィンは心の傷に呻く感じはしても、何か口にしたく動かしているよう。

 俺は、耳を澄ました。 

 「……ふ、服……。」

 「!……服?」

 「さ、サイズが、合わないのよ……っ!ダボダボなの……っ!」

 「!……。」 

 顔を落としたまま、マフィンは言葉を紡いでいて、最後は嘆きを漏らす。 

 聞くなら、どうも忘れたのなんのではないよう。

 むしろ、そのサイズの違いに軽く嘆いているみたい。 

 そこで、何となく察してしまう。

 あんまり見たくはないが、そっとクーンを見て。

 改めてマフィンを見るなら、判明できてしまう。 

 そう、胸の大きさだ。

 クーンのそれは結構なサイズであり。

 マフィンみたいな服であっても、その膨らみを確かに感じ得よう。

 その人に合わせてあるのだから、マフィンが着ると……ちぐはぐ。

 「……う~む。」

 困ったことに、俺はそんなマフィンに声を掛けられない。 

 デリケート故、俺では慰めの言葉は迂闊に言えないし。 

 「!それなら、あたしがっ!」

 「!」

 それは、迷いに捉えられ。

 ならばと、自分がと、躍り出る。

 アビーは手を挙げて。

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