▲▲つ7っ!うわさからほんとのくーんちゃん!

 その、銭湯までの道のりにて、楽し気に話を交えながら進み、やがて目前に。 

 「あらぁ~!噂してたでしょ?」

 「わぁぁ!!!出た、それとデジャヴ!!!!」

 迫った矢先に、待ってましたと長い髪の毛の猫耳少女が出迎えてくる。

 両腕広げて、ハグを求めるかのようににっこりとした笑顔までして。  

 ふんわりと香る中には、独特な雰囲気を呼び。

 ああ、マフィンのような優雅さではないが、ふんわりとした感じはする。

 さしずめ、メインクーンか。 

 それでいて、服装には独特なエプロンをして。  

 ……クーンである。

 それこそ噂の。 

 銭湯の前にて出現したクーンに、俺は訓練で鍛えられた跳躍。

 無駄遣いな感じながらも見せて、飛び上がる。

 ある意味恐怖のようなものを感じてもいて、その場を離れたくもなった。

 あと、デジャヴも感じて。

 そう言えば前も、噂をしていたらひょっこり出てきたよね?

 「……大和、あなた何をされたのよ。あと、よくそんな元気あるわね。」

 そんな俺の跳躍見て、マフィンは呆れる。 

 俺は、若干気が気じゃない。飛び上がったなら、素早く隠れようとして。

 でも、そんなにあるわけでもない。 

 「!」

 それは、アビーが買って出る。

 俺の驚いた様子に、察してか。 

 着地した俺の前に立ち、両手を広げて守ってくれる。 

 「もう、ダメだよ、クーンちゃん!大和ちゃんを驚かせたら。」 

 現れたクーンに、アビーは言ってやる。 

 「えぇ?〝まだ〟何もやってないわよ。それと、〝これまでも〟。」 

 「……。」

 言われたクーンは、困ったといった具合。 

 また、所々強調する部分もあり。

 聞いていて俺は、何とも言えない気持ちとなる。  

 ……思い出してみて、あれで何もしていないのだろうか、甚だ疑問である。

 「お姉ちゃんはぁ~、噂された気がしたから、出てきたのっ。……でもそれって、お姉ちゃんに気があるってことよね?……くすっ。」 

 「!」 

 クーンは言われても、堪えてはいない。 

 むしろ、噂されたと喜んでもいるよう。

 挙句には、そっとした笑み浮かべ、その向こうに何とも言えない吐息を忍ばせて。

 その吐息するなら、不思議と瞳を潤ませ、視線を俺に向けてきた。

 「?!」

 見つめられたとなると、途端身体が跳ね上がるような刺激を受けて。

 俺は胸を押さえて動けなくなり。 

 また、感じる熱とは、クーンからの熱視線か。

 「?!えっ?!」

 「?!わぁ?!」

 さらには、そっとクーンは動いただけ。 

 だのに、クーンの姿は溶けるように消えたかと思えば。

 何と、アビーの防御を掻い潜り俺の傍に出現して見せた。

 それにはアビーも驚きだが、俺の方もそうだ。 

 だけじゃない、動けない俺だからこそ、そのまま抱き締めてきて。

 「~~~?!」

 そうなると、急激に体温が上昇、心拍数まで跳ね上がる。

 そうとも、これこそクーンの真骨頂。

 男を虜にする技だ。挙句、ハグまで加わるとなると。

 こちらの気がどうにかなってしまいそうになる。 

 服装からよくは分からないが、クーンもなかなかな体つきであるし。

 それもあって、気がどうにかなりそう。

 そう、自分のオス的な何かが、目覚めそう?とか。

 「んんんぅぅぅ~!!大和ちゃん、いい匂い!!」

 「?!ひぇぇぇ~?!」

 ……それで終わるならまだよかったかも。 

 続きには、クーンは俺の匂いを嗅ぎだす始末。

 汗で濡れた身体からは、汗のすごい臭いがするだろうに。

 しかしクーンは、喜ばしく思えて、悦に至るような声を上げていた。 

 それにはある意味恐怖を覚えて、つい悲鳴を上げてしまう。 

 このままだと、いけないような。

 「……やめなさい。」 

 「?!あぁん!!」

 「!……はぁはぁ……。」 

 このままどうにかなりそうだというタイミングで。 

 マフィンが冷静な顔で静止して。

 クーンの首の後ろを掴むと、引き剥がしてくれる。

 なお、クーンは名残惜しそうか、悲しそうでもあるが、艶めかしい声を上げる。 

 俺はまだ、心拍数が収まらず、胸を押さえたまま、苦しそうにした。 

 「……それならこうなるわね。大和、心中察するわ……。」 

 「……はぁはぁ。わ、分かってくれて、ありがとう……。」

 引き剥がしたなら、マフィンは言ってくれる。

 呆れた表情と口調から、どうも察した様子で。 

 俺は素直に頭を下げた。

 「……クーンもっ!あんな強烈アプローチしたらダメじゃない。」

 「……えぇ?大和ちゃんもその気があるんじゃないの?お姉ちゃんの胸の中で、ときめいていたわっ?ねぇ?」 

 「?!って、だからぁ!!」

 他方、マフィンはクーンに説教をして。  

 だが、クーンは素直には聞き入れない。

 俺を引き合いに出して、さもしたそうにしていたとばかりに。

 助け船求めるようで、俺にまた、あの溶けるような熱視線をやる。 

 加えて、そっと舌を出して、舐めるような様子だって。 

 俺は見ただけで、余計に心音が跳ね上がってしまい、気絶しそうになる。

 そんなクーンを、マフィンは咎めた。それも、かなり強い叱責だ。

 「……しょんなぁ……。お姉ちゃん、ショック……。」

 叱責には、クーンも黙らざるを得ない。

 耳までしょんぼりして、さも反省するが。

 「!」

 そうであっても、俺への熱視線をやめない。

 とろけるような瞳で、またも俺を見てくるのだ。

 心音が鳴りやまない。気だって、どうにかなりそうなまま。

 マフィンはやっぱり気付いて、軽く溜息吐いたなら、余計俺から離した。

 

 「……もぅ。マフィンちゃんったらぁ!私なんだから、らしくさせてよね?」

 「……って、あなたは……。」

 「……。」 

 引き離して、また姿勢を正させるが。

 当の本人であるクーンには、あんまり堪えていないみたい。

 まるで、挨拶代わりだと言わんばかり。それはマフィンを余計に呆れさせた。 

 俺は、ようやく心音も収まったか、アビーに手助けされて立ち上がり。

 見据える形となるものの、静かにしているしかないや。

 何か言えば、こちらが取り込まれないと、ね。  

 「……ええと、大和ちゃん大丈夫?クーンちゃんの毒、平気?」

 「!……どうだろう。もしまた、見つめられたら……。」 

 アビーは心配そうにこちらを見て、聞いてくるが。

 正直、自分が無事かどうか、よく分からない。 

 自信なく、どう答えていいやら迷ってしまう。

 「……。」 

 話題を変えないと、自分の気がどうにかなりそう。

 「……?!」

 ……なお、どうやって気付いているのやら。

 言われたとクーンは、マフィンから視線を逸らして、こちらをまた見つめてきた。 

 どうも、傍ら説教でも始めていたようだが、聞いちゃいない。 

 むしろ、これ幸いとばかりに。

 「!!ああもぅ!人の話を聞く時は、ちゃんと見なさい!」

 「?!あぁん!!!」 

 もちろん、マフィンが見逃すわけもない。 

 クーンが俺を見たと気付いたなら。

 その両頬に手をやって、無理矢理マフィンを見させるよう首を動かした。 

 途中、やっぱり艶めかしい声を上げ。 

 聞いているこっちにとっては、何だか気がどうにかなりそう。 

 「……分かっているわよぉ。そんな、大和ちゃんをごにょごにょしないって。ちょっとした挨拶よぉ。」

 「だからって、魅了しないっ!」

 「……はぁい。」

 「……。」

 やっぱり言い聞かさせる。

 クーンはマフィンに凄まれて、しょんぼり気味だ。

 その瞳には、涙ぐむか、潤みを帯びさせて。

 傍ら見ていると、もし見つめたら、それだけでも魅了されそう。 

 俺はそっと、視線を逸らした。 

 「分かりましたぁ。分かりましたぁ!だから、ちゃんと仕事させてよぉ。」

 「……もぅ。」

 「……。」 

 様子は見えないが、耳だけは澄ましていて。 

 マフィンにどう、凄まれたかは分からないけれど。 

 反省に声色が変わり、そう、涙声になっていて。 

 分からせたか、マフィンはまた、溜息を洩らした。

 「じゃあ、本題に入るわ。」

 「……はぁい。」 

 「大和と私の服を洗濯しなさいな。そのために出迎えたんでしょ?……まあ、どう察知したかは、この際聞かないわ。」

 「!」

 「……えぇ!そう!」

 そうして、クーンが反省したというところで、マフィンは本題へと進む。

 命令口調だけど、俺とマフィンの服を洗濯しろと、半ば命令気味に。 

 と、耳にしたなら、涙声はどこへ?クーンの声は喜びに上ずり。

 俺は、その勢い察知して、視線を戻せば、その瞳は喜びの色を示していた。 

 そう、とってもな。 

 見ると、……嫌な予感がする。 

 何だかそう、変態の。

 服の臭いを嗅いで、喜ぶ的な……。その予感がする。 

 「……そうよねぇ~!だって、大和ちゃんもだけど、マフィンちゃんも汗だくで、いい匂いだからねぇ。それにマフィンちゃん、汗に濡れて、服が肌に張り付いちゃって、身体の輪郭がよく分かるようわぁ。」 

 「?!えぇ?!ちょ……っ?!」 

 「!!」 

 予感的中しそう。

 クーンは先の反省はいずこへ。

 その瞳が怪しげに輝くと、反撃とばかりにマフィンに言い寄ってきた。 

 言われて俺ははっとなるが。 

 確かに、マフィンは汗だくだったからか、いつものゆったりした服装は。

 身体の輪郭が分かるように、張り付いている気もする。

 言われてマフィンは、ぎょっとなり。軽く青冷めてもいる。 

 「……この際だから、私が揉んで、もっと魅力的にしてあげようかしら?きっと、いつもきれいにしているから、肌も艶もいいでしょうねぇ~?うふふふふ!」

 「ひっ……ぅ?!」

 「!!」 

 それを好機と。

 クーンは見るなら、マフィンに対して反撃に。

 〝マッサージ〟を想起させるよう、手をワキワキと動かして迫る。 

 何かを察したマフィンは、余計に青冷めて。 

 俺は、注目しそうになるも。

 マフィンに対して怖気付かないクーンのメンタルにも、驚きそう。 

 だが、今のクーンを見てはいけないと、俺はやはり視線を逸らすしかない。 

 「ひぁぁあああああああああ?!」

 「!!……うぅ……マフィン、ごめんよ……。」 

 飛び掛かれたか。

 マフィンは悲鳴を上げる。

 俺は、逸らしたまま、祈るように手を合わせるしかない。

 

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