▲▲つ6っ!うわさのくーんちゃん!

 「!」 

 何だか、寝そべって空を見上げて話すと、何だかその。 

 「……ピロートーク。……全然上手く言えないや。」

 「?!~~~?!」

 「!」

 上手く言おうとして、言えないが、何だかそんな気がしてならない。 

 2人激しい運動した矢先に、こうだとなおさら、ね。

 と、傍ら聞いていたマフィンが、意味を察してか。

 沸騰したような、よく分からない声を上げてくる。 

 何でまた?とか思いつつ、分かるようなという気もして。

 確認のため、横目でマフィンを見た。

 「……あ、何だか、ごめん……。」 

 見たその顔は、本当に沸騰しているかのような真っ赤で。咄嗟に俺は謝る。

 「っ!!このっ!おバカ大和っ!!!!何てこと言うのよっ!!!」

 「?!あがぁ?!」

 ……挙句の果てに、目が合った瞬間に、顔面目掛けてスフィアが直撃してくる。 

 それも、フォトンシールド纏った、嫌に痛い状態で。

 マフィンは、恥ずかしさにとうとう声を漏らして。

 いつの間にか放っていたようだ。

 「いっでぇぇぇ!!!」

 俺は、どこにそんな元気があるのか。

 痛みに飛び上がっては、そこら中を転げまわる。 

 「……あ……つい……。ごめんなさい……。」

 マフィンは恥ずかしさ一転、俺が痛がる様子に冷静になっていた。

 いたが、転げまわる俺には、その声は届かない。 

 「!」

 と、その転げまわる俺の身体を、誰かがそっと手で留めてきて。

 また、屈みこむようにして、影を作ってきた。

 誰だと、そっと顔を上げると。

 見上げる形だが、赤茶色っぽい毛色の女の子がいて。

 俺を見るなら、面白そうに、嬉しそうに笑みを浮かべてきた。

 「大和ちゃんどうしたの?えへへっ!とっても楽しそうだったよ?」

 「……アビー……。ええと、これは……。う~ん、何と言えばいいやら。」

 その少女はアビー。

 して、そこから、話し掛けてくるが、どこか状況とずれている。

 どこをどう見れば、楽しそうであったのか、聞きたくもなる。

 しかし、それは彼女が、アビーであるという言葉に全て集約されてしまう。

 故に、複雑で、困ってしまう。 

 「!あ!大和ちゃん汗だくっ!!それに疲れてるっ?大変だね。」

 「!!……。」

 と、思っていたら。

 そこには気付くのに。残念な感じがしてならない。

 アビーは気付いて驚いた声を上げるなら。

 「はいっ!大和ちゃん!」

 「!」

 また、にっこりとらしい笑顔で手を差し伸べてくる。

 差し出されたその手を、俺は取って。

 すると、さも男の子の身体で、自分よりも重いはずなのに。

 アビーは軽々と手を引いて俺の身体を立たせた。 

 「……あ、ありがとう。」

 俺は、勢いにキョトンとしつつも、お礼を言う。

 「!」

 だが、アビーは軽くにっこりと、一瞥するだけで。

 今度はマフィンの方にも向かい、同じように手を差し伸べていた。 

 切り替えの早いことで。 

 らしいけれど。

 「マフィンちゃんもっ!汗だくだね!」

 「あ、ありが……って!それはいいわっ!!」

 「あれあれ?」

 「……。」 

 アビーは同じようにして、マフィンを立たせたが。 

 マフィンの方は、言われたことに気が気じゃないみたい。

 ただでさえ、俺から言われたことに軽く顔を赤くしているのに。 

 気に障ったか、赤い顔が余計に赤くなっていた。 

 アビーは不思議そうに首を傾げる。 

 そういうのは鈍い。見ていて、何だか呆れて頭が痛くなった気もした。

 俺は押さえて、静かに見守る。 

 「あ、そうだねっ!マフィンちゃん!それって、気持ちが悪いってこと?汗をそんなにかいちゃったからかぁ~。ごめんねっ!気付かなかったよ!」

 「?……!」 

 「?!えぇ?!」 

 その、マフィンの様子に不思議そうにしていたアビーだが、何を思ったか。

 気付いて手を叩いて。

 俺とマフィンの様子に、きっと汗だくで不快なのだと思っては。

 今にも提案しそうな勢いを出してきた。 

 その始めとして、アビーはまず気付かなかったと謝ってきた。

 なお、そうなると、どう言えばいいか、窮してしまい。

 マフィンは、軽く何だか悲鳴めいた声を上げていた。 

 「ごめんねっ!それじゃあ、銭湯に行こっ!!そして、汗をさっぱり流そうよ!」

 「?!」

 俺とマフィンの様子なんて、気にも留めない。  

 アビーの独壇場は続き、言うならば、この後銭湯に行こうと提案を。

 その様子は、とても輝いていて。 

 こう、ぐいぐいと引っ張っていく。

 ああ、銭湯は、俺の住む村にある、大きな煙突が特徴の建物にあるんだ。

 で、アビーは俺とマフィンの様子見て、そう考えたと。  

 「……。」

 「……。」 

 そんなアビーの提案に、2人して多少困惑はした。 

 アビーの言った通り、俺とマフィンの服は、汗ばんでいて。正直不快。

 「……まぁ、そうね。」 

 「……だね。」

 断ることはなく、俺とマフィンは一緒に、頷いてアビーを見た。 

 「えへへっ!決まりだねっ!じゃ、早速行こっ!」

 「……はぁ、まったく……。」

 「……あはは。」

 そうと決まればと、アビーは早速来た道を引き返そうとしてきた。

 その様子には、俺とマフィン呆れて。

 マフィンはやがて溜息を、俺は苦笑してしまった。

 

 アビーに先導される形で丘を下り。 

 途中、独特に目立つ長い煙突の建物を臨む。そここそ、銭湯で。 

 目的地。 

 今その煙突からは。

 いかにもお湯を沸かしていると言わんばかりに、煙を上げていた。

 思うと。 

 気持ちよさそうな想像が頭の中にあり。

 口元には、ふと笑みが浮かぶ。 

 「あ!そうだ!ついでに、〝アライハウス〟にもねっ!」

 「?!うぇ?!」

 「?どうしたの?」

 「……い、いや、その、何でも、ない……。」 

 「?」

 だが、その笑みも、アビーがニコニコしながら振り返りながら言うことに。

 掻き消えてしまう。俺は、素っ頓狂な声を上げるが。

 何でもないと振り払うものの。

 アビーが口にしたことに、した嫌な予感は消えない。

 ああ、〝アライハウス〟ってのは、簡単に言うとクリーニング屋だね。

 まあ、ぱっと見は普通の家だけどね。 

 銭湯に隣接しているんだ。

 しかし、それだけなら俺は嫌な予感はしない。 

 それは、そこにいる住人がやや問題で。

 ……〝クーン〟って人がいてね。

 マフィンみたいに髪の毛の長い、猫耳な人なんだけどその人がちょっと……。

 ……癖が強い。

 それも、言いにくいけれど、男を虜にする、とんでもない魅了の使い手みたいで。

 よく知らないけれど、その毒牙に当てられそうになったことが、何回もあって。

 ここにてその話題を出されると、つい緊張が。 

 その緊張といい、様子にアビーは何でだろうと首を傾げるばかり。 

 「……?あら大和。どうしたの?銭湯にいい思い出がないって感じ?」 

 「……いや、銭湯は……。それよりも、〝クーン〟が……。」

 「!……あ~……。」

 代わりに。

 マフィンが聞いてくれる。 

 言われたからと、はぐらかすのも悪く。

 ただ、感じる緊張だけは拭えないままでも、俺はその理由を言った。 

 〝クーン〟。それだけで、マフィンは察したよう。 

 分かっているかのように、声を漏らした。 

 その様子から、マフィンも知っているのか。 

 「……もしかして、分かる?」  

 聞いてみた。 

 「……まあ、もちろん……ね。」

 返事のその口ぶり、知ってそうなを醸して。

 「……というか、私が知らなかったら、おかしいでしょ?」

 「あ……。」

 分かったというところで、マフィンは逆に聞き返してくる。

 聞き返してきた時には、俺に呆れてもいて。

 そも、この村の上の立場の人間であり、当然かと。

 気付いたなら、恥ずかし紛らわしに、頭を掻いてしまう。

 「それもそっか……。まあ、なら、……ねぇ。」

 そうとして、俺は濁しながらも。

 分かるなら、クーンの様子も通じよう。 

 「ふふ。惚れっぽいってことでしょ?聞いたわ。あなたも危うく、〝毒牙〟にやられそうになったって。」

 「!……うぅ。耳の良いことで……。」

 マフィンはして、分かっているからこそ。

 何か想像して、楽しそうに笑みを浮かべてきた。

 先に言った通り、惚れっぽい。挙句、男を虜にすると。

 その、クーンのことをはっきりと言われると、俺は余計に緊張してしまう。

 「……って、大和。呆れたわ。」

 「!」

 「普通、緊張するよりも、むしろときめくのにね。やっぱり、ウィザードって、特別なのかしらね。」

 「……う~ん。どうだろ。」

 だが、俺の態度には、マフィンには意外そうに思えて。

 呆れられもするなら。

 どうも、クーンの能力に対して、ここまで抵抗するのは特別なのだとか。 

 ウィザードというのをやり玉に挙げられると、困惑する。

 「……まあ、今更よね……。」

 「……だね。」

 マフィンは俺の困惑に、これ以上追及することもなく。

 呆れて締め括る、もう今更だと。

 俺も同意。 

 あれだけの活躍をしたのだから。

 今更特別じゃないってのも、まあおかしい話だね。

 「あれあれ~?2人ともどしたの?遅れてるよ?」

 「!」

 そうして、マフィンと話し込んでいたら。 

 先を行くアビーが声を上げてくる。

 振り返っては、手を振って招いて。

 また、気付かない内に、離れてもいた。アビーは気付いて俺とマフィンを手招く。 

 「!あ、ごめん。」  

 「私もよ。遅れてごめんなさい。」

 「ううん。いいよっ!2人とも、お疲れだからねっ!大丈夫大丈夫っ!あたし、気にしてないよっ!」

 遅れたとこちらは詫びて。 

 でも、それを気にするアビーではない。 

 いつものにっこり笑顔を見せて。

 気にしていないと首を横に振る。  

 俺とマフィンは、アビーに追い付こうと駆けて。

 追い付くと。

 「ねねねっ!マフィンちゃん、何話してたの?面白そうだったよ?それなら、あたしも混ぜて?」

 「!」

 「……あら、聞いていなかった?」

 アビーはそう声を掛けて、加えて自分も入れて欲しそうに。 

 マフィンは珍しいと言いたげ。

 「一応、クーンのことよ?あなたも知ってるでしょ?大和は何だか、トラウマみたいに怯えるからね、そのことを話していただけよ。」 

 「!クーンちゃんの。あ、そっか!」 

 「!」 

 マフィンは断りもせず、アビーの要望に応える形で、話してくれた。 

 マフィンもそうだが、アビーもそれだけで察してくれて。

 猫耳を跳ねさせては、ピンときているよう。

 「大丈夫だよ!大和ちゃん!あたしが守るからっ!」

 「!……ありがとう。」 

 知っているからこそアビーは、頷いて、元気づけるように言ってきた。

 力こぶを見せるような動作にまでも添えて。

 強さ感じるその笑顔には、勇気付けられて俺まで笑みが浮かぶ。

 「……一体全体、クーンを何だと思っているのよ、あなたたちは。大和が遭遇したようなモンスターじゃあるまいし。」

 傍ら、マフィンはその様子見て、呆れ果てている。

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