▲▲つ5っ!おうぎっ!

 「……この型は、あなたに教えた5つの型全ての動きを取り入れたものよ。ええとね、習うには効率のいい動きだけどね、極めるとなると、難しいわ。……そうね、格好よく言うなら、〝奥義〟かしら。」 

 「!……〝奥義〟……!!」

 何が起こるか、最初は言葉。

 曰く、〝奥義〟だと。それは、より緊張を増す。

 マフィンからは、重々しい感じはしないが。

 俺が知っている意味と同じなら、それは結構なことじゃないか。 

 剣術で奥義なんて。

 はたして俺には、その資格があるか、相応しいか、嫌に緊張してしまう。 

 「……まあ、そんな堅苦しい顔しないで。昔の昔、大昔じゃ、レーセを使う人たちは皆これで練習していたらしいから。」

 「!……そんなものか?」

 マフィンは、俺の様子に気づいて、そっと笑みを浮かべながら言ってくれた。

 だから、重々しくないのだろう。

 かつては、それでレーセの練習をしていたとするのだからと。

 「極めるとなると別だけどね。まあ、あなたみたいな人なら、きっと。」」

 「!……。」

 但し書き、極めるとなると別。 

 そう言われると、余計に緊張してしまう。 

 「……あらら。けど、ね。でも、やることはあなたがやってきたことの復習、まとめみたいなものだから。そんな緊張しないで。」

 「!……そっか。なら。」 

 俺が緊張するものだから、マフィンは言い直すよう。

 軽く慌てて、また、笑みを浮かべては、安心させてくる。

 その、まとめとか、復習なら安心できるかな。

 「じゃあ、総復習みたいなもので、行くわよ。」

 「!……ああ。」

 そうして、安心したところでと。 

 マフィンは促してくる。

 今から、マフィンが動くとして。

 促されるまま、俺は構えなおすことにする。

 構えとして俺は、弓引く構えを。

 「……。」 

 「……。」 

 そうして、二人の間にまた、沈黙が走る。 

 「……!」

 マフィンがかっと瞳を見開くと、煌めいて。

 その時に、マフィンは地を蹴り跳躍して、その刃を振り下ろす。 

 俺は、受け止めるよう刃を動かして。

 「!」 

 俺は、受け止めたが、いつもの受け具合とは違う。

 重心が上手く採れず、危うくバランスを崩しそうになる。 

 受け止めて、俺は素早く反撃に転じようとするが。

 だというのに、マフィンは先の、舞いのような動きで受け流してくる。 

 なら、と俺はそっと、手を動かすと。

 手首を滑らかな感じで。それは、マフィンがしたような動き。

 エレガントさを感じさせるかも。ただし、端から見て俺がそうあるかは別。 

 「!」

 手首を滑らかに動かして、スナップを利かせる斬り、相手の隙を狙う、刺突。

 しかしそれら、見抜かれて払われる。

 払われたならと、反動を使い俺は、跳躍して、宙を舞う。

 そして俺は、空中で身体を回転させると、遠心力を伴った斬撃を与えようとする。 

 マフィンは察するか。

 舞いを思わせるように身体を回すと、素早くこちらに刃を向ける。  

 刃同士、結果打ち合って。

 その先へ進めない。

 これは……。

 「!……うぬぬ……。」 

 やりにくい!

 俺は、相手がどう出るか分からず、また、どうやるか考え付かない。

 そのために、軽く呻き、悩みに顔を歪めた。 

 たしかに、マフィンが言うだけはある。

 今まで教えてきたこと、その総復習みたいなもので。

 教わった全ての動きがその型にはあり。

 また、全ての型の動きを頭に描く。 

 そうなると、こちらは呻くしかないか?

 「!」

 いいや、ある。 

 レーセを使うだけが、能じゃない。

 閃きに俺は、片方の手をポケットにやり、まさぐり何か握り締めて。 

 取り出すなら、光を発する水晶玉が握られていた。 

 スフィアだ。 

 「!!……って、まさか……。」

 「!……そのまさか。」 

 マフィンは察して。 

 その通り、と俺はまさかに相槌を打つ。  

 俺は、放り投げる動作をすれば、スフィアはまるで、鳥のように空を舞う。 

 俺は、片方の手でレーセを操り。

 もう片方の手で、スフィアを操る真似をしたのだ。

 一人なら、こうだが。

 もう一つの手段があれば?どう?

 「……うふふっ。どうしてかしら。嬉しい。」

 「!」

 難しいだろう。 

 その時において、マフィンは不意に笑った。

 なぜだか。

 疑問に思うが。

 そもそも、俺にスフィアの使い方を教えたのは、他ならぬマフィンなのだから。

 今そこに対峙した人が、自分もびっくりするほどのことをして、喜んでいるのだ。

 だから。

 「なら、私も。これも、訓練だからねっ!」

 嬉しさそのままに、マフィンがすることは、ばっちりとウィンク添えて。

 手を動かすことなく、スフィアを浮遊させてきて。 

 マフィンなのだから。 

 服のどこかにでも仕込んでいるし。

 それを触れることなく浮遊させることなど、朝飯前。

 「!!……うげぇ。」  

 それも、大量に。

 見ていてげんなりしてきた。 

 やり方、間違えたかも。いや、むしろ火を点けちゃった?

 俺がしようとしたこと。

 見切られた挙句、こちらよりも大量に放出するなんて、容赦ないね。

 「……っ!」

 「!!!」

 マフィンが小さく息を吐いたなら。

 その大量のスフィアたちは一斉に、だが、バラバラに飛んできた。 

 「げぇぇ!」

 俺は、緊張最早いずこ、必死に逃げ惑う形になりそう。 

 「っ!」 

 とはいっても、何もしないとまずい。

 なら、とマフィンのように軽く念じて。

 すると、俺の背中にあるバックパックが開き、負けない眩い光たちが飛んできた。 

 俺の集めたスフィアである。 

 沢山飛び交い、それこそ、マフィンのスフィアに負けないほどに。 

 「えいっ!」

 「のっ!」

 マフィンはその瞬間に見抜いて、見開くなら手を突き出す。

 マフィンの放ったスフィアたちが、煌めくとレーザーが放たれた。

 俺も負けじと、腕を突き出す。 

 さらには、宙に円を描くよう動かして。

 俺の方は、光の膜が作られて、マフィンの放つレーザーを弾き返す。 

 《注意。フォトンシールドレベル低下。出力が不足しています。》

 「!」

 その際に、背中から別の声が。

 盾だ。思い出の品々を元に、どうにかして形成された。

 謎の、記念盾みたいな形状の者だけど、思考をするAIを搭載しているみたく。

 時折、モニターして、持ち主である俺に話し掛けてくる。 

 ……最近は、ほとんど聞かなかったけど。 

 久し振りな気がして、懐かしくも思える。 

 ……だけじゃないや。

 言ってくれることに、こんな時にそう言えばと思ってしまう。

 バックパックの中にあったスフィアたちは、手入れしていないかも。

 だから、もしかしたら出力が低下して。 

 場合によっては、このまま貫かれる?多分、加減してくれるだろうけれど。

 「……っ。」 

 俺は、軽く息を吐いて。 

 それを見据えては、俺はコントロールする手を握り締めた。

 「……パワーサプライ。」

 そう呟く。

 《了解。パワーサプライ。》

 「……対象を俺に。」

 盾は俺の呟きにコマンドを認識。 

 では、対象をとして、それを俺にした。

 《その選択は危険です。身体への負荷が大きすぎます。》

 「……。」

 そうすると、盾から言われてしまう。  

 それは、過去にあった話だけど。 

 無理矢理、スフィアの力を、血管を通して全身に行き渡らせるような真似をして。

 マフィンから聞いた話だと、非常に危険な話だった。

 ああ、ちなみに盾にもスフィアが搭載されている。

 おまけに、他のスフィアにエネルギーを供給できるって話だ。

 応用すれば、スフィアから放たれるエネルギーのように。

 全身に行き渡らせることができるかな。 

 そのために、俺は静かに首を横に振る。 

 《了解しました。パワーサプライ、開始。なお、過度な負荷を検知した場合、強制的に停止させていただきます。》

 「!……あ、うん。」 

 バックパックの中の盾は汲み取り。 

 ただし、と付け加えて。つまりは、俺に危険が及ぶと、止めると。 

 まあ、それなら安心かな。

 同意する。 

 「!!」

 同意と同時に、盾が熱くなる。その熱は、やがて自分の体中に行き渡り。

 また、見れば自分の体中の、血管が光輝く様子を見せていて。

 ただし、身体には多少圧力を感じてもいる。

 一瞬呻きそうになったが、慣れてもきて、そうでもない。

 どころか、力が増す感じもする。 

 これは、これこそは。 

 「……って大和!!!やめないさいな!!」

 「!」

 「……また、〝スフィアの祝福〟を使うつもり?!私を吹っ飛ばすの?!」

 ……曰く、〝スフィアの祝福〟。

 数多のスフィアと通じ合い、その祝福を賜った者だけが到達する領域。

 ちなみに、その祝福を賜った者こそ、ウィザードと称される。 

 それを俺が今、見せる。 

 マフィンは、知っているからこそ、嫌がって。

 挙句、それが想起させるか、吹っ飛ばされるのを予感して。

 マフィンは震えて言ってきた。

 「……う、その。吹っ飛んだら、ごめん……。」

 「ああもう!!あなたはっ!!どうなっても知らないわ!!」 

 「……ごめん。」

 俺は、謝りはするが、そもそも、この状態になってしまったのだから。

 さて、どうなるかよく分からないや。

 マフィンはどうなってももう知らないとして。

 攻撃に使っていたスフィアを呼び戻して防御に使うよう。

 スフィアを使って、光の膜を形成させる。

 俺は、やはり再度謝るだけで。

 だが、始めてしまったのだから、止まれない。

 修行、それにて俺は、マフィンと激突するか。 

 「……はぁぁぁぁっ!!」

 「……!!」

 マフィンは気合を吐露して。

 相手が、〝ウィザード〟であるがために。

 フォトンシールドは強化させる、そうして、マフィンは俺に突撃してきた。

 自身を強化したか、その速度は速く。 

 手を抜けば、……やられちゃうかも?

 そんな気迫。

 俺は息を呑んで、手にしてあるレーセを振り、攻撃を退けようとする。

 「?!」

 レーセ同士の光の刃、触れ合うその時に、凄まじい衝撃波が辺りに放たれる。

 その中であっても、俺とマフィン2人、レーセを振るい続ける。


 「……はぁはぁはぁはぁ……。」 

 「……ふーふーふーふー……。」

 やがて、どれぐらいの時間が過ぎたか。

 俺とマフィン、その場で倒れて、空を仰ぎ見る。

 同じように、荒い息を出して。

 蒼天の青に、涼しさを思い描いて。

 「……。」

 「……。」

 2人して沈黙。

 ふと思うことが。

 一体何をしていたのだろう。

 それだけ激しく動いて、そうして倒れて、ようやく思考が追い付いてきて、だ。

 「……私たちって。」

 「……何してたんだろう?」

 「「……。」」

 シンクロに、マフィンと考えと声が合う。

 言った側で、2人してまた沈黙してしまう。 

 この際、どう言えばいい? 

 見上げた空に問うても、答えを返してくれるわけもない。

 なら、と目を瞑り、俯瞰で考えると。 

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