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るのさんがここにきて7日目(だったと思う)起きるとるのさんはすでに起きて仕事をしていた。
米が炊けていていい匂いがする。
るのさんがふと聞いてきた
「私、ここにずっといるけど、いいの?」
「もちろん」
るのさんはすごく喜んだ。なんでも「いいよ」とか「うん」とかより強い「もちろん」を選んだことがうれしい!と言った。
るのさんはタブレットパソコンで仕事をしながら上機嫌でカセットコンロのボンベを変えた
「これ、結構すぐなくなっちゃうんだけど、Amazonで売ってた!」と言う。
なるほど、ここの住所を聞いてきたのはそのためだったのか。
俺も本はAmazonで買うし、るのさんも買い物はAmazonに依存しているみたいだ。
生協はこの日を最後にもう来ないことになっていた。
るのさんは徒歩7分のところに小さなスーパー(看板の上に新しい看板が貼り付けられており、光るとどっちの文字も全く読めないので名前が不明のスーパーだった)を見つけ「そこが水曜日が肉の日なの!」とほこらしげに言った。
どうやら水曜日は肉が安いらしく、1週間分の肉を買う習慣がついたらしい。
「野菜も安いし、駅前まで遠かったからよかったあ」
そのスーパーはコンビニより近かった。コンビニは角までは同じだが、反対方向に曲がって10分。るのさんは歩くのが遅いのでもう少しかかっていた。
身長は162cmで俺と6cmしか違わないのだが、歩くのが遅かった。
手を繋いでやらないと不安なくらい遅かった。
俺はその頃ちょうど職探しを始めていたところで、おやじからもらう30万でも足りず、とにかく映画を見る金と本が欲しくて、いろんなところに履歴書を送ると同時に深夜クロネコヤマトで働いていた。
「え、だから夜中いなくなるんだ」
俺には合わない時給ではあったが眠れなくて暇を持て余し、すぐに日給をくれるクロネコヤマトはいい仕事だった。
その時るのさんははじめて俺に聞いた「いとうくんって仕事なにしてたの?」
俺はおやじから金をもらっているとは言い難かった。
「プログラマしてた時期とかあるけど」
「んじゃなんでヤマトで働いてるの?」
「いや、ヒマだから」
「ん?今は?」
「お休み中だけど金には困らない」
「え?マンションとか持ってるとか?」
「まあそんなとこかなあ」
「いいなあ、不労収入。私なんか17歳の時制服に裸足で家を飛び出してからドロ水すすってでも生きてきたよ」
初耳だった。
41年の自分の歴史を躁特有の多弁なって話していたのを俺はほぼ無視していた。
るのさんは俺が寝てる時とヤマトに行っている時以外俺にくっついてひざまくらで「耳が汚れてる!せっかく綺麗な耳してるのに!」と言いながら俺の耳掃除をしたり、料理をしたり、自分の仕事を寝室の隣の7畳ほどのダイニングキッチンで後ろを向けば流しに一歩進むだけの距離にこたつを置いてやっていた。
こたつであるがテーブルとして使い、俺が生協の宅食を食うのに使っていたものだ。違うのは位置だけで、るのさんが最小限の動きで済むように流しの前まで動かしていた。
今やるのさんの定位置になっており、タブレットパソコンで盛んに仕事をしている。
夕飯を食べながらるのさんは
「あ、今日は別の友達とあってきたんだよー、ムサコから立川まで行って、ゲーム作ってる3人組の人、でも一人来られなかったんだよねー」
という。
ムサコというのは武蔵小杉駅のことで、俺の家は最寄りは新丸子だが、武蔵小杉からも徒歩2分しか変わらないので南武線が使えるのだ。
昼に「用事がある!!」といって飛び出したるのさんは立川まで行っていたという。
「んとね、その3人は専門学校が一緒でね、コープスパーティってゲームを作ってアスキーの賞に出したの。それで500万円もらって大阪から東京に出てくる資金にしたんだよね。今でもダンテ108があれば遊べる。そのゲームの熱狂的ファンだったんだけど、絵がうまい友達の本名が引っかかって調べてみたらコープスパーティの「作曲者」だったの。んで「チームぐむぐむ」って会社作って、今度コープスパーティ移植されるんだよー!!楽しみ!!」
俺はそのゲームを知らなかった。るのさんは女子だけどやたら格ゲーが強く、ゲーマーであるらしい。アーケードゲームから古くはゲームウォッチ(?)ゲーム10(?)セガマークⅢ(?)MSX(?)X68000(?)ピピンアットマーク(?)メガドライブ(?)PC108(?)FC、ディスクシステム(?)レーザーアクティブ(?)ジャガー(?)PCエンジン、SFC(俺が知っているのはここからだ)Windows、Mac(俺はちなみにソニーとアップル派だ)プレイステーション、セガサターン、ワンダースワン(俺が知ってるのはカラーのだけだったがるのさんは白黒カラー?含め8台持っているという)3DO(?)ドリームキャスト、ゲームボーイ、NEOGEO、X−BOXのゲームまでジャンルを問わず幅広くやっていた(本の知識によって知っているのもあったが知らないのも多数混じっていた)「自分がやったことあるだけ」という謎のルールで各種エミュレーターまでWindowsのタブレットパソコンに各種入れていた。
ただし、現在本来の家である千葉の家に行かないと動かすことはできない、と言う。
昔は格ゲーの同人誌を作っていたが、現在下火になって売れなくなってしまい、曰く「スト2ではじめて親の金を盗み、エレクトーンの月謝も使い、姉の財布からお金を抜いてまでスト2をやったがスト2の二次創作で食えるようになったので「スト2で死に、スト2で生き返った」人生だという。
俺はスト2はSFCでしかみたことがなかった。
俺は格ゲーは好きだと前述したと思うが、鉄拳5からだった。
「俺、鉄拳5なら誰にも負けないぜ」
俺は得意になって言ったが
るのさんは「鉄拳は2までだったら負けない自信あるけども、3からミシェールがいなくなったのでやってない」と言った。
そうか、10歳違いはこの辺に如実に出るのだな……
と、素直に思った。
まさか格ゲーでコテンパンにできない相手がいるとは。
それが俺の記憶が正しければ「2017年10月8日」だ
俺の記憶力はすごいとよく言われるが見た映画読んだ本の内容は全部覚えているので正しいはずだ。
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