第11話友人の父
「電話、誰だった?」
もしかしたらニックかもしれない。
しかし、そんな希望的観測は打ち砕かれた。
「パパだった。」
「ふーん。なんかあったの。」
途端にキアラは興味をなくす。
「うちの近くで事件があったから迎えに来るって。」
なんでもないことのようにマディソンが言う。
「事件って?」
マディソンの近所なら、キアラの家からも遠くない。
家では母が眠っているはずだ。
携帯に連絡は来ていないから、おそらく今も。
「なんか暴れてる人がいたらしくて。警察が来てるって。」
「なにそれ。」
「さあね。取り押さえられてるって言ってたけど。今ここにいるってパパに言ったから、もうすぐ来るよ。キアラも乗ってくでしょ?」
「うん。」
母は何かあっても迎えに来てはくれないだろう。
それなら友人の家の車で帰ったほうが安全だ。
そのまま黙ってスプーンを口に運んだ。
しばらく店のショーウィンドウに寄りかかって冷たいヨーグルトを舐めていると、ベージュのブロンコが停車した。
運転席の窓から日に焼けたマディソンの父が顔を出す。
「よお、お二人さん。さあ、さっさと乗ってくれ。ヨーグルトを溢すなよ。」
マディソンがドアを開けて奥に座る。
それに続いてキアラもシートに座った。
重いドアを閉めると、マディソンの父はアクセルを踏んだ。
「学校はどうだった。」
「数学のテストがあったよ。」
「ちゃんと点が取れたか?」
「まあ、そこそこね。」
淀みなく会話が続けられる。
父と娘の会話だ。
「キアラはどうだった。」
親友の父親は娘の友人に娘と同等に会話をふる。
「うーん。ベストは尽くしたけど。」
「キアラはいつも数学はA+だもん。全部できたんでしょ?」
「まあ、そこそこね。」
戯けてくるマディソンにキアラは先程の彼女そっくりの返答をした。
「マディは昔から数字がからっきしだからなあ。」
笑いながら運転手が言った。
「でも、文系科目は大得意でしょ。」
「パパのせいでね。」
にやけながら親友を眺めると、不貞腐れたように頬を膨らませていた。
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