第6話 歴史のクラス
去年の九月に入学したハイスクールは、外観もそこそこ綺麗で新しい。
近くの私立校と競い合うようにして改築したからだ。
もちろん貧困層が暮らす地域なので柄は悪いが。
授業は退屈だ。
自分に進学の機会がないとわかっている分。
でも優等生で居なければならない。
悪さをすれば、母親ともども校長室行きだ。
そもそも、母がそんな呼び出しに応じるかという問題もある。
友人も教師もキアラの家が母子家庭であるとは知っている。
だから何かと気にかけてはくれるのだ。
だが、母親が依存症であることは言っていない。
仕事に出ればまともにいられるのだから、もしかしたら単に気持ちの問題なのかもしれない。その希望を捨てられなかった。
演劇の授業は楽しい。でも歴史は地獄。数学はあくびが出そうになる。
必修科目は滅べばいいのに。
そう毒づきながら、女教師の話を聞き流す。
どうせ教科書を読んでいるだけだ。
歴史はマディソンの方が得意だから、彼女に教えを乞えばいい。
ただ歳を食っているだけの女よりよほど優秀なのだから。歴史だけは。
欠席者が多いせいで、隣の席は空席だ。
つまりマディソンとも一緒には座れない。
黒板の前に仁王立ちしている女王がそう命じた。
数学の後にやってくるランチタイムが待ち遠しかった。
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