第4話 ラジオの歌姫

いくら朝が来ないよう祈っても、日は昇る。

案の定空が白んできた。もうじき朝になる。


もう少しラジオを聴いたら、シャワーを浴びよう。


キアラはそう決めた。

あまりにも早くシャワーを浴びると階下の住人から苦情が来る。所詮は安アパートだ。壁も床も薄い。互いの生活音はどうしたって漏れてしまう。


惰性で聞いていたラジオから音楽が流れてくる。


古ぼけたメロディーだった。九十年代かもう少し前かもしれない。


あなたのことを考えながら、ベッドに横たわって、時計の音を聞くの。

考え事はいつも同じ。

暖かなあの夜が蘇ってくる。


綺麗な歌だと思った。

名前も歌手も、流行った年でさえ知らないけれど。

きっと詞の中の女の子は、きっとティーンネイジャーで茶髪で瞳はヘーゼル。恋をしてるのかもしれないし、本当は違うことを考えているのかもしれない。

ただ、きっと自分をそこに投影したかった。


存在することを許してほしかった。

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