悪の組織の会議
ミツダコウ
悪の組織の会議
「この国を我々のものにするにはどうすれば良いか」
ある悪の組織のボスが部下たちに聞いた。部下たちは口々に意見を出し合った。
「都心に毒ガスを撒きましょう」
「この国のトップを暗殺するのです」
「爆破テロを起こして言うことを聞くよう脅せばいいんだ」
どれも悪の組織らしい物騒なアイデアだったが、成功するかどうかは微妙なところだった。
「うーん、どれもありきたりなものばかりだな。何か奇想天外なアイデアは出てこないものか。おい、お前何か案はあるか?」
ボスが意見を聞いたのは先程からずっと黙り込んでいた参謀だった。参謀はゆっくりと顔をあげニヤリと笑った。
「夢を見させる枕を作りましょう。そしてそれを大量に売るのです」
部下たちは互いの顔を見合わせ大声で笑った。
「夢を見させる枕だと? それがこの国の支配とどう関係する? それとも参謀、君は本当に枕で世界を支配しようとしているのか?」
「はい。私は本気です。ただし、先程私が言った通り枕といっても強制的に夢を見させる枕です。それもとびきりいい夢を」
「それを作ってどうなる?」
ボスが唸る。
「とにかく私を信じてください」
言われた通りにボスは夢を見させる枕を部下に作るように指示した。そして、数年の年月を経て夢を見させる枕は開発された。
「言われた通りに作ったが、この枕をどうするつもりだ? まさかこれを高額で売って財力を底上げしようと言うのか?」
ボスが尋ねた。
「いえ、違います。確かにこの枕は世紀の大発明とも呼べる代物なので販売すれば高額で取引できるでしょう。しかし、私たちはこれを格安で大量に売るのです」
「それは何故?」
「とにかく私を信じてください」
言われた通りにボスは夢を見させる枕を格安で大量に販売した。この商品は売れに売れ、瞬く間にテレビの普及率に追いついた。いつしか悪の組織の名は有名な枕開発業者として知れ渡っていた。
「言われた通りに枕を大量に売ったぞ。しかし、あまりに格安で売ったから我々の組織は大赤字になってしまった。これからどうするつもりだ?」
ボスは頭を抱えていた。
「次は睡眠導入剤を売るのです。簡単に使えて、苦しくなく、安らかな眠りに誘う。永遠の」
「つまり毒を売ると言うわけか?」
「確かに毒ですが、表向きは睡眠導入剤としてください。もちろん騙すようなことはしてはいけません。この薬を使えば永遠の眠りにつくとしっかりと商品に表記するのです」
「そんなもの誰が好んで買うんだ!?」
「買いますよ。みんな」
言われた通りにボスは睡眠導入剤と銘打った毒薬を世間に売った。最初の売り上げこそあまりよくはなかったが、数ヶ月と経つにつれ売れ行きはじわじわと伸び始めた。そして、数年が経った頃、商品はぴたりと売れなくなった。
「さぁ、言われた通りに睡眠導入剤を売り捌いた。次はどうするのか?」
ボスは参謀に尋ねた。
「私たちの目的は達成されました。私たちはこの国を支配したのです」
「どういうことだ?」
「私とボス以外に今、この国で起きている者はいないということですよ。みんな現実の世界よりも夢の世界の方が好きなようですね」
悪の組織の会議 ミツダコウ @kaityuu_bentou
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