第32話 キーンの保護とアルト男爵の動向(後編)

「これで、ランも安心ですわね。」


「そうですわね。ソフィアお姉様。」


 ランも子爵家でキーンが保護されるという話は、知っていますが、実際に保護されたことで、安心できたでしょう。


「ドナルドよ。アルト男爵の動向はどうなのだ。」


「はい。アルト男爵は、やはり元ザザン伯爵派閥と元サイ公爵派閥と接触しアルト男爵が聖女の親ということでまとめ役となり新たな派閥を結成したようです。

 普通に考えれば、わかりそうなものですが、聖女ランが神殿に入ることは、誤算だったようです。

 アルト男爵は、聖女ランを使いこちらに要求をしてくるつもりだったようです。」


「ああ、先代と先々代の聖女は、伯爵家以上だったから王都に屋敷があり、聖女としての力も強かったから神殿に入らず、王都の屋敷から通っていたからな。

 聖女ランも力は先代、先々代と同等だという聞いているが、男爵家だから王都に屋敷がないから毎日務めがあるので、神殿に入ることは、当然なのだが、なぜそこを見落として、計画を立てるのだ。理解できんな。」


「父上、聖女がやっと見っかったので、自分達が優位だから、聖女ランを利用して、要求をのまぬと聖女に結界を張らせないなど言って、自分達の要求をのませらることで、頭がいっぱいで、単純なことを見落としたか。

 先々代は、結婚もせず、長きにわたり聖女を務めてくれたとのことですし、単純に知らなかったという可能性もありそうですが。」


「ああ、自分達のことしか考えず、能力のない先祖の功績で貴族でいるだけの愚か者ばかりだからな。

 ドナルド、他に何か新たな情報あるか。」


「はい。どうやら当初の計画が頓挫したので、帝国の皇帝・皇太子派の貴族との接触を考えているようです。できれば、皇帝か皇太子と接触したいみたいですね。」


 侵略路線の皇帝・皇太子派の貴族、ましてや皇帝や皇太子と接触したいとかアルト男爵たちは、そんなに神のもとへの階段を上りたいのですかね。


「ほう。戦争になれば、民たちに不安や迷惑がかかるが愚か者たちは、粛清できそうだな。粛清のことだけを考えれば、それは、いい情報だな。」


「はい。そうですね。それからその帝国ですが、第二皇子は、帝国を変えたいという考えのようで、古参の貴族家以外や民からの支持を集め始めているようです。古参の上級貴族家の跡継ぎたちも表立っては、できないですが、第二皇子の考えに賛同しているようです。」


「そうか。ミュゼルバ王国としては、第二皇子派に頑張ってもらいたいものだな。詳しくわかり次第、第二皇子や第二皇子派と協力関係を結べれば、帝国の侵略路線も変えられるし、王国の膿を出しきれるな。」


「そうですね。同盟国とすることも視野にこちらも調査致します。」


「頼んだぞ。戦争にならぬずにお互いがいい方に向かっていくことがベストだからな。」


 そうですね。国王陛下のお考えは、私も同意ですわ。民のことを考えれば、戦争などせず、平和的な解決が一番ですからね。

 他の皆さんも頷いておりますし、皆、同じ意見のようですわね。

 そして、アルト男爵派に対して、更に目を光らせ、皇帝・皇太子派に接触したとしても戦争になる前に粛清して、帝国次第では、平和的な決着を目指すということで、まとまりましたわ。

 皇帝・皇太子派に接触した時点で、反逆罪で処刑が確定してしまいますわね。

 反逆罪は、重罪ですが、貴族家が減りすぎてしまい影響が大きくなるので、連座はせず、身内が同様に関わっていた場合のみ同じく処刑とし、粛清貴族家をある程度は、残するということになりました。

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