第30話 キーンの保護とアルト男爵の動向(前編)

 侍女が呼びに来て、食堂に向かい、昼食を食べたあと、ランは、神殿長猊下と共に神殿に向かわれた。

 私は、神殿に向かうランを見送りながら、聖女の仕事は、神殿にやってくる怪我人や病人に聖魔法を使い治療したり、王国への魔物の侵入を防ぐために結界を張ったり、神に毎日お祈りを捧げたりするということくらいしかわからないけど、生活環境も変わるし、慣れるまでは、大変だろうと思った。


 そして、ランが聖女認定されてから一週間がたった。

 やはり、国王陛下が懸念していた通り、男爵夫婦は、ランが神殿暮らすことになったことにより、キーンへの虐待を再び行っていることが判明した。

 そして、国王陛下は、アルト男爵、男爵夫人、令息のキーンに登城するよう命を出した。


「アルト男爵、私が登城の命を出した理由は、わかるな。」


「わかりかねます。それになぜ、妻や息子もなのかわかりません。まさか、ランが何か問題を起こし、私たち家族も罰を受けることになったということでしょうか。聖女に認定され、はじめは、王国のためになれると私と妻は喜びましたが、ランもできがよくなかったので、何かやらかすと不安でしたので今は後悔しています。」


 アルト男爵は、焦った様子も何かを隠そうとしている様子もないですね。

 本当になぜ呼ばれたかわかっていないという感じです。

 しかもランが問題を起こしたことを前提に話されてますが、ランは何も問題を起こしてません。

 聞いた話によると、結界もしっかり張られ、今まであったような魔物の侵入の報告もなく、治療に訪れた民からも感謝され、まだ一週間しか経っていないのに多くの民や神殿の者から慕われ始めているとのことで、ランは、聖女として頑張っています。


「いいや。聖女ランは、聖女として問題なく務めているとの報告を受けている。」


「では、男爵夫人はどうだ。理由はわかるか。」


「いいえ。私もわかりません。」


 男爵夫人もアルト男爵と同じ感じですね。

 ランの弟のキーンは、城に呼ばれて緊張しているのもあるでしょうが、不安そうな顔をされてますね。


「そうか。わからぬか。」


 アルト男爵と男爵夫人の返答を聞いて、国王陛下は、呆れたようにそう言いました。

 私もそうですが、男爵家以外の謁見の間にいる者は皆、同じ気持ちでしょうね。


「キーンよ。すまぬが、服の裾を捲って見せてはくれぬか。それから女人は、私が言ったら後ろを向くように、許可するまで後ろを向いてこちらを向くことは許さね。。」


「!!」


 キーンは、突然の国王陛下の申し出に驚いています。まあ、そうですわよね。女性には、見られないけど、いきなりそんなことを言われれば

 

「「!!」」


 アルト男爵と男爵夫人は、驚きもあるでしょうが、慌てている感じですね。

 まあ、慌てるでしょうね。使者として来た騎士と共にすぐに登城するように言われたので、神殿に行き、ランに命じて治療させることもできなかったので、キーンの体には痣があるでしょうからね。


「国王陛下、キーンを辱しめるおつもりですか。なぜそのようなことをさせるのです。」


「そなたら、理由がわからなぬと申し、キーンにも何も言うなと言っておいたのであろう。なので、キーンには申し訳ないが手っ取り早くわからせてやろうと思ってな。」


 国王陛下は、実際にはそんなことをキーンにさせるつもりはなかったのです。

 それを聞いたアルト男爵と男爵夫人の二人がどうするか見たかったのです。


「アルト男爵、男爵夫人、私は、既に報告を受けているのだよ。その方らがキーンを虐待していることをな。聖女ランにも虐待をしていたらしいな本人から直接聞いておる。」


「ランは、虚言癖がありまして、虚言癖の者を国王陛下は、そのようなことを信じるのですか。確かに、躾で叩いたことはありますが、それはあくまでも躾です。言ってもわからないので、手を出したまででございます。」


「そうですわ。躾です。親の言うことを聞けぬ者に対する躾です。男爵家の者として、恥ずかしい思いをランとキーンにさせないためにしたことですわ。」


 痣ができるほどの暴力が躾ですか……呆れたいいわけですね。

 国王陛下が、どのように追い詰めていくのか。お二人がこの後、どのようないいわけを続けるのか。キーンがクロイスラー子爵家で養子も視野に入れること含め、保護されることになると知ったらどういう表情をされるかたのしみですわね。

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