第6話 『雷拳』VS『瞬雷』 ②
「おいおい……まじで強えじゃねーかあいつ!! フラン相手に一撃喰らわしたぞ!!」
「本当、凄いよね……戦い方も上手いし、参考になるよ!」
隣にいるオーウェンとカミラが興奮気味に話す。
周りを見ると、予想以上の戦いに大盛り上がりだった。
「アリスはこの戦い見てどう思ってる?」
「そうですね。 素直に凄いと思っていますし、バルーノ君から学べることはたくさんあるなと思っていますよ」
私は戦いを見ながらカミラに返事をする。
あんな啖呵を切ったし、身体つきを見れば鍛えていることは分かっていたので、強くはあると思っていましたが、まさかここまで強いとは……。
いくら色々制限しているフラン相手とはいえ、あそこまで戦えて傷をつけることができるのは素直に称賛に値しますね。
私でもフランと同じ立場なら傷をつけられていたかもしれません。
でも、あのテンションになったフラン相手はちょっとしんどいですね……。
さて、バルーノ君はこれからどうするんでしょう? ちょっと楽しみです。
私は姿勢を直し、戦いに注視した。
□ □ □ □
「ほらほらどうしたバルーノ! 逃げてばかりじゃ勝てないぞ!!」
「うっせぇ! いきなり雷の上級魔法なんて使ってくるんじゃねーよバーカ!!」
俺は防御魔法を張りながら毒を吐く。
いきなり稲妻を落としてんじゃねーよ!
「遅延魔法だって上級魔法と遜色ねーだろ!」
フランは容赦なく何回も稲妻を落としてくる。
俺は防御魔法を貼り続けながら逃げ回っていた。
くそっ……近づけねえからめんどくせぇ。
魔力量を考えると、俺が対抗して稲妻を放ったところで、先にガス欠を起こすのは俺だ。
魔力量はべらぼうに多い方じゃねぇ。 なんか突破口が欲しいな……!
「
俺は大中小、さまざまな大きさの雷棒を発現する。
それを何本か槍の要領で思いっきり投げた。
「おっと。 そうはいかないよ」
フランは稲妻を落としながら、剣で棒を弾く。
弾かれた棒は地面や壁に突き刺さった。
「チッ! やっぱりダメか。 ならーーーーーーーー」
俺は身体強化を更にかけてスピードを上げる。
そして、思いっきり棍で叩きつけた。
「もうそれは効かないよーーーーーって!?」
「
俺の棍の先端部分から刃が発現する。 刃は細くて長い。 その刃はペンダントへと伸び、あと少しで砕くというところまでいった。
「あっぶなぁ。 刃をそこから出すのかよ。 まるで死神の鎌みたいだな!」
「そりゃぁどうも。 ついでに刈り取られたら良かったのに」
「それは嫌だね!!」
俺は刃を収めて、時々魔法を放ちながら何回も棍を振るう。
フランはそれに対して剣で薙ぎ払ったり、同じように魔法を放ってきた。
「オラっ!!」
「うわっ!? 危なっ!?」
俺は地面に突き刺さっている棒を思いっきり蹴飛ばす。 蹴飛ばした棒は一直線でフランの方に行ったが、ヒョイっと躱されてしまった。
「棒を蹴るなんて面白いね! そのなんでもありの戦い方、いいなぁ!!」
「なら当たれやぁ!」
「それとこれとは話が別でしょ!!」
俺は棒を投げたり蹴ったりしながら、フランに攻撃をしかける。
「
雷箱と雷球を何十個も発現させて、それを蹴ったり打ったもした。
蹴って打つと同時に雷槍も放つ。
それをフランは同じ魔法で相殺したり、逆に撃ち返した。
そんなことをしているとある程度時間が経ち、俺が思い描いた場面が出来上がった。
「もう! さっきからなんなんだ!? 野球かサッカーでもしたいのかお前は!?」
口ではそんなことを言っているフランだが、なにかがあるかもしれないと、ずっと警戒しているのが窺えた。
場面は出来上がった。 ここで勝負を仕掛ける!!
「雷突棍!」
俺は脚に力を入れて一気に駆け出し、フランに攻撃をしかける。
それに対してフランは防御魔法を張った。
俺の攻撃は首の前で止められる。
「雷刃」
俺は棍の先端から刃を出した。
「それはさっき見たよ!!」
フランは腕に身体強化をかけて剣で薙ぎ払う。
その威力に思わず俺は棍を離してしまった。
「ここでーーーーーって、まじかよ!!」
棍を離した俺にトドメを刺そうとするフラン。
しかし、頭上から何本もの雷槍が降り注いできた。
『おおっと!? ここで決着かと思われましたが、雷槍が空から降ってきたぞぉ!? 一体どうなってんだぁ!?」
『雷突棍を放つ時、無詠唱で上空に雷槍を何本か放っていましたね。 そして、時間差で落ちてくる様に時間を稼いだ。 上手い遅延魔法の使い方ですね……』
女生徒と学園長の解説が聞こえてくる。
でも、攻撃の手はこれだけじゃないんだぜ?
「チッ!! めんどくせぇ!!」
フランは無詠唱で防御魔法と雷槍を放つ。
その時俺は、ある魔法を放った。
「
俺の足元から雷の線が何本も伸びて、フランの足元に絡みつく。
これで俺も動けないが、数秒フランも動けない。
この数秒でフランに勝つ!!!
「!? 雷ーーーーーーーー」
「ーーーーーーーー雷刃」
フランが魔法を放つ前に、俺は雷刃を発現させる。
雷刃は辺りに落ちている、雷箱や雷球、雷棒から発現していた。
「なっ!?…………」
「雷刃はなにも、棍だけから出るわけではないんだぜ?」
幾つもの雷刃がフランの身体を貫く。
雷刃は、ペンダントも砕いていた。
『しょ、勝者はバルーノ=エルガーだぁぁぁぁぁ!! 誰がこんなことになると予想していたでしょうか!? これは……これは番狂わせが起こったぞぉぉぉぉ!!!」
女生徒の発狂を聞き、静かだった観客席は少しずつ実感が湧いてきた様で、拍手が湧く。
そして、数秒後には叫び声や歓声が上がり、アリーナは凄まじい熱量に包まれた。
それを見て俺は、強く、強く拳を握り、雄叫びを上げたのだった。
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