第9話 1年生交流会お疲れ様でした会&親睦会①
「1年生交流会お疲れ様ー! かんぱ〜い!」
「いや、手に持ってるの飲み物じゃなくてアイスなんだけど」
「もう! バルーノはノリが悪いなぁ。 こういうのは気分なんだよ気分! ほら、後ろの2人見てみなよ!」
「ん?……マジかよ」
カミラに言われて後ろを振り返ると、そこにはアイスを近づけて乾杯しているオーウェンとアリスがいた。
2人とも笑顔を浮かべて楽しそうだ。
「まじか。 アリスもあんなことやるんだな。 オーウェンはするイメージあったけど」
「アリスは案外ノリがいいんだよ! ってことで、かんぱ〜い!」
「……かんぱ〜い」
俺はカミラと乾杯をして、アイスを口に含む。
ザクっとしたコーンの食感と、甘くて冷たいアイスが美味しかった。
今日は1年生交流会お疲れ様でした会と、親睦会を兼ねて王都に遊びに来ている。
今はカミラが外せないと言っていたアイスクリーム屋でアイスを買い、食べ歩きしながらオーウェンが希望した闘技場に向かっているところだ。
「ってか、俺たちこんな堂々と遊んで良いのか?」
「っと、いうと?」
「いくら変装していて、姿とかをカモフラージュしてくれる魔法をかけているとはいえ、カミラとオーウェンは七大貴族で、アリスはこの国の皇女だぞ? 護衛の1人や2人は必要じゃないのか?」
俺は平民だから問題ないかもだけど、3人は問題あるだろ。
もし誘拐されたり、殺されたら大問題だ。
みんなと合流した時から周りを気にしているけど、まじで護衛がいる気配がしない。
Sランクの俺が察知できないってことは、まじで護衛がいないんだろうな。
「そこは問題ありませんよ。 私もいますし、ここにいるみんなは実力者。 それにこのカモフラージュとかの魔法をかけてくれたのは『光帝』です。 大丈夫ですよ」
アリスはアイスを鼻につけながら話しかけてくる。
いや、お前あざと可愛いな。
「アリス、鼻先にアイスついてる」
「えっ!? 本当ですか!?」
「まじまじ」
「うわ〜恥ずかしいぃ」
そう言いながら、アリスはハンカチでアイスを取る。
食べているバニラアイスみたいに白かった肌は、いちごアイスみたいに赤くなっていた。
「それに、もしもなにかあったら『光帝』が直ぐに来れるようになっています」
「すげぇな。 学生の遊びでもしもがあったら『光帝』が駆けつけてくれるのかよ」
「はい。 これが普通のSSランク冒険者なら、ここまでの破格の待遇はないでしょうけど、私は皇女ですからね。 破格の待遇になりますよ」
アイスを食べ終わったアリスは、近くにあるゴミ箱に持つ部分についていた紙を捨てる。
いつもの髪型とは変えてツインテールにしていたアリスの髪が、風によってキラキラと舞った。
「ーーーーーーー私もいます。 もしもがあったら、みんなのことは守りますよ」
「ひゅ〜! カッコいい!」
「ちょっ! ちょっとぉ!!」
アリスがカッコ良いことを言うと、カミラが笑顔でアリスに抱きつく。
お揃いにしているツインテールを見ると、2人は本当の姉妹のように見えた。
「ま、そういうことだ。 俺たちはちょっと気を張りながらも、しっかり遊んで楽しもうぜ。 俺、今日を楽しみにしてたんだから、バルーノも楽しんでくれないと、俺さーみーしーいー!!」
「あぁ! もう! 分かったから肩を組むな! お前重いんだよ!」
オーウェンが笑いながらガッと肩を組んでくる。
口では小言を言ったが、こうやって同年代の友達と遊ぶのは初めてだったから、なんだかんだ楽しかった。
「今日は闘技場に行った後に服屋に行って、本屋に行くんだから、予定はいっぱいだせ? 疲れて動けないとかになるなよ、バルーノ」
「その言葉、そっくりそのまま返すよ。 オーウェン」
俺は笑いながらオーウェンの顔を見る。
オーウェンも笑い返し、イチャイチャしていた2人に声を掛けると、俺たちは闘技場へと向かってまた歩き始めたのだった。
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