第3話 1年生交流会。

「それじゃあ、1年生交流会について説明していくぞー! お前らよく聞いとけよ!」


 学年主任の話すことを、1年生達は真剣な眼差しで聞いた。


 話を要約すると

 ①正方形の舞台の上で1対1で戦い、魔法、剣術なんでもあり。 そして、特殊な魔法壁の中で闘うから怪我の心配はなし。 武器は学校指定のものを使うこと。


 ②首にかけているペンダントが破壊されるか、降参、もしくは場外から出されたら負け。


 ③ ランキング上位10名は制限がかかっている建物に入ったり、資料を見ることができる権利が与えられる。(勿論、全部見られるわけではない)


 の3つだ。


「うへぇ……上位10名きつそうだなぁ。 おい、お前自信あるか?」


「えっ? 俺?」


 隣に座っている、短い赤髪を整髪料でバッチリお洒落に決めているイケメンな男が、俺に小声で話しかけてきた。


 結構体つきがっちりしてるな。 近接タイプか?


「自信はあるぜ」


「お、まじかよ! お前、名前はなんて言うんだ?」


「バルーノ=エルガー。 お前は?」


「俺の名前はオーウェン=ガルシアだ! よろしくなバルーノ!」


 俺はオーウェンと握手をする。 オーウェンの手はゴツゴツしていて、鍛えていることが窺えた。


 それにしても、ガルシア家か。


 7大貴族の一角で、火属性を得意とした槍使いの一族。


 こいつも充分強者の域に入るだろうな。


「それにしてもバルーノ=エルガーねぇ……。 名前聞いたことねぇな」


「まぁそうだろうな。 でも、見てろよ。 ここから俺の名前は広がっていくぞ」


「……へぇ。 面白え! お前に興味湧いてきたぜ!!」


 そんなことをコソコソ話していると、学年主任がギロっと俺たちの方を睨んだ。


 おっと……静かにするか。


「……ゴホンッ! それじゃあ、最後の話に移るぞ。 今から組み合わせをドンドン発表していく! まずはそいつと戦った後、ランダムで第二試合、第三試合と対戦相手を決めていくぞ!!」


 学年主任が近くにある箱の中に手を入れて、生徒の名前が書かれている紙を取り出す。


 そして、記念すべき第一試合目を行う生徒の名前が呼ばれた。


「今年度の1年生交流会の最初の試合を飾るのは






 ーーーーーーフラン=オーリオとバルーノ=エルガーだぁぁ!!!」


 その名前が発表された瞬間、体育館は歓声やらなにやらで揺れた。


 まさかの最初の試合で『五彗星』の『瞬雷』が登場。


 体育館は異様な雰囲気に包まれていた。


「おいおいまじかよ!? 瞬雷の闘いが1番最初に見れんのかよ!?」

「きゃーーー! フラン君が闘うの楽しみぃ!!」

「1発目からやばいなおい」


 俺は周りがお祭り騒ぎの中、頬を引き攣らせる。


 おいおい……まじかよ。 学校生活の中でいつか戦うことになるとは思っていたけど、よりによって初っ端の試合で相手が『瞬雷』だと?


 ふざけんな!! どうせ『五彗星』が相手になるなら、『戦士皇女』か『竜姫』の方が良かったわ!!


「バルーノってお前知ってる?」

「いや、知らねぇ。 あんたは知ってるか?」

「聞いたことねぇな。 ま、瞬雷が相手なんてご愁傷様だな」


 周りの憐れむ声が聞こえる。


 あー……いやだいやだ。 俺は膝に頭を埋め、手で耳を塞ぐ。


 俺が『雷拳』とはバレていないんだろう。


 でも、『雷拳』と『瞬雷』が比べられる声はよく聞いてきたので、その憐れむ声はとても不快だった。


 俺の個人情報はあまり世間に公表されていないが、同じ属性、同じ性別、同じ年齢ということは分かっているので、俺たちは比較されてきた。


『雷拳は瞬雷の下位互換』

『未来の雷帝は瞬雷に殆ど決まりだろう』

『停滞する天才・雷拳。  昇り続ける天才・瞬雷』


 世間からは勝手に色々なことを言われ、書かれてきた。


 心は何度も折れそうになり、悔し涙だって何回も流した。


 特に瞬雷と戦ってボロ負けした時、俺は悔しさのあまり眠れず、数日間狂ったように危険な仕事を受けまくった。


 俺にとって『瞬雷』に負けるってのは、他の誰かに負けるのとは訳が違うんだ。


 ……これは俺が俺の為に勝たないといけない試合だ。 負けたくないし、負けられない試合。


 正直、ほどほどに戦ってギリギリ10位ぐらいを目指そうと思っていた。


 でも、そんなのはもう関係ねぇ。


 俺は…………瞬雷に負けねぇ! 負けたくねぇ!!


「……うっわぁ……ある意味名前広がっちゃってるよ……。 おいおいバルーノ。 さっきは自信があるって言ってたけど、これはちょっと分が悪いんじゃないか?」


 オーウェンが同情気味に話しかけてくる。


 そんなオーウェンに対して、俺は膝に埋めていた顔を上げて言ったのだった。












「ハッ! 瞬雷が相手たぁ上等だよ!! 勝ってやるよ!!!」

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